人文研究見聞録:天道神社 [京都府]

京都市下京区にある天道神社(てんどうじんじゃ)です。

祭神に天照皇大神、八幡大神、春日大神の3柱を祀っており、五穀成就・家畜の悪疫除に御神徳があるとされています。


由緒

人文研究見聞録:天道神社 [京都府]

由緒書によれば、かつては天道宮と称されており、山城国長岡(現・長岡京市)に祀られていたとされます。

なお、奈良時代の延暦11年(792年)に付近の村落で悪疫(流行病)が蔓延し、村の家畜が甚大な被害を受けて全滅の危機に瀕した際、天道宮に祈願したところ、1頭の犠牲も出さずに全治したそうです(家畜の悪疫除けはこのため)。

その後、延暦13年(794年)の桓武天皇の平安遷都と共に、三条坊院東洞院(現・東洞院御池上る付近)に勧請されることになり、村民・家畜共々が沿道に並んで見送ったとされます。

なお、平安京に遷ってからは社殿も荘厳なものとなり、皇室をはじめとする人々が常々集まる宮であったとされますが、度々 兵火に巻き込まれて何度か焼失してしまったそうです。

時代が下って織田政権になると、天正2年(1574年)に信長によって現在の地に遷されますが、江戸時代に京都で起きた大火事「天明の大火」によって再度焼失してしまい、後に再建されて現在に至るとされています。

祭神

天道神社の祭神は以下の通りです。

主祭神

・天照皇大神(アマテラス):三貴子の一柱であり、皇室の氏神とされる
 → 伊勢神宮内宮の主祭神
・八幡大神(はちまんおおかみ、やはたのおおかみ):第15代応神天皇と同一とされ、全国の八幡宮で祀られる
 → 誉田別命(ほんだわけのみこと)とも
・春日大明神(かすがだいみょうじん):春日大社の祭神であり、藤原氏の氏神とされる
 → 武甕槌命・経津主命・天児屋根命・比売神の総称

境内社

人文研究見聞録:天道神社 [京都府]
天道天満神社
人文研究見聞録:天道神社 [京都府]
八坂社、約束稲荷神社
人文研究見聞録:天道神社 [京都府]
厳島社

天道神社の境内社は以下の通りです。

摂社

・天道天満神社:菅原道真公を祀る
・八坂社:牛頭天王(スサノオ)を祀る
・約束稲荷神社:稲荷神を祀る
・厳島社:市杵島比売命を祀る

昭憲皇太后の御胞衣塚

人文研究見聞録:天道神社の御胞衣塚

天道神社にある「昭憲皇太后の御胞衣塚(しょうけんこうたいごうのおえなづか)」です。

胞衣(えな)とはいわゆる胎盤のことであり、皇太后の栄華祈念のため、父・一条忠香によって皇太后の御胞衣が埋納された胞衣塚であるとされています。このこともあり、皇太后が19歳の時に皇后宣下を受けることができたと伝えられているそうです。

なお、かつての日本では「出産後に胎盤を庭に埋めると子供が元気に育つ」という風習があったとされており、沖縄県では現在でもそうした風習が残っているそうです。

また、この風習の起源として、伊勢神宮の祭神である天照大神(アマテラス)の胞衣が山頂に埋められたという伝説もあり、その山が現在の恵那山(えなさん)であるとされています(恵那神社の由緒書に残る伝説)。

そのほかにも、全国には「胞衣信仰」として多くの「胞衣塚」が残されており、一説によると、これらは縄文時代から続く古代の信仰であるとされています。

余談ですが、神秘学の世界では、胎児と胎盤は生まれてからしばらく繋がっているとされ、それぞれが共に外部環境の影響を受けると言われています。

そのため、胎盤をゴミとして廃棄すると胎盤はゴミから悪影響を受け、それが回り回って胎児にも影響するとされてます。ですので、胎盤は厚い土の中に埋め、胎盤に自然界の影響を受けさせること推奨しています。

ちなみに、現在では胎盤は医療廃棄物として処理されているようですが、出産の際に「風習」を理由にすると胎盤は持って変えることが出来るようです。

胎盤をゴミとして捨てるのは簡単ですが、庭に埋めるのも簡単です。ですので、昔の人の風習に習って胎盤を土の中に埋めた方が、胎児にとっては良いのかもしれませんね。

料金: 無料
住所: 京都府京都市下京区仏光寺通猪熊西入西田町615(マップ
営業: 終日開放、無休
交通: 大宮駅、四条大宮駅(徒歩5分)、烏丸駅、四条駅(徒歩14分)
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。