大縣神社(大県神社) [愛知県]
2015/11/18
愛知県犬山市にある大縣神社(おおあがたじんじゃ)です。
紀元前より尾張国開拓の祖神を祀ってきた古社とされ、付近には円墳をはじめとする古墳群が点在しています。それに伴い、神社では西方にある青塚古墳も管理しており、その歴史の古さが窺い知れます。
また、境内の一角には「姫石」という女陰(女性器)を模った奇石が祀られており、「姫の宮」で祀られる神は古代より女性の守護神として称えられてきたとされることから、女性を尊崇してきた神社であるとも考えられます。そのため、毎年3月15日に行われる「豊年祭」では、「女陰」を神として奉る内容の祭祀が執り行われています。
なお、神社の西南に位置する田縣神社でも同日に同名の「豊年祭」が行われ、こちらでは「男根」を神として奉る内容の祭祀が執り行われます(一応、無関係とされる)。
性器崇拝についてはこちらの記事を参照:【生殖器崇拝(性器崇拝)とは?】
神社概要
創建由緒
社伝によれば、当初は本宮山の山頂に尾張開拓の祖神である大縣大神を祀っていたとされますが、垂仁天皇27年8月(紀元前3年)に現在地に新宮を造営され、それを以って遷座したと伝えられています。
そのため、現在では本宮山を神体山とし、その山頂に本宮社を設けて大縣大神の荒魂を祀っています。なお、かつては別宮2社、末社52社があったとされ、現在よりも大規模な神社だったとも云われているようです。
このことから、創祀の相当古い神社であると思われます。なお、小牧市の田縣神社も弥生時代(前3世紀~後3世紀の間)の創建と伝えており、この2社には性器崇拝という独特の祭礼を行うという共通点も見られます。
主祭神について
主祭神は大縣大神(おおあがたのおおかみ)とされますが、この名前を持つ神は『記紀神話』には登場しません。そのため、地域開拓の祖神に与えられた称号の様な名前であると考えられ、その正体については諸説唱えられています。
大縣大神の主な説
・国狭槌尊(クニサツチ)とする説:江戸時代の『尾張名所図絵』などによるもの
・天津彦根命(アマツヒコネ)とする説
・少彦名命(スクナヒコナ)とする説
・大荒田命(オオアラタ)とする説:尾張藩の儒者・松平君山の考証によるもので最も有力とされる
・武恵賀前命(神八井耳命の孫)とする説
・国狭槌尊(クニサツチ)とする説:江戸時代の『尾張名所図絵』などによるもの
・天津彦根命(アマツヒコネ)とする説
・少彦名命(スクナヒコナ)とする説
・大荒田命(オオアラタ)とする説:尾張藩の儒者・松平君山の考証によるもので最も有力とされる
・武恵賀前命(神八井耳命の孫)とする説
ただ、いずれにしても「大縣大神は尾張国開拓の祖神である」とされているようです。
豊年祭
豊年祭(ほうねんまつり)は五穀豊穣・万物育成・子孫繁栄を祈願する祭りであるとされ、女性器を模った山車が出たり、そうした衣装を纏った神幸行列が行われることで知られています。
近年ではネットで田縣神社の豊年祭の知名度が高まるにつれ、大縣神社の豊年祭も知られるようになっていますが、なぜか公式サイトに紹介は無く、その規模も年を追うごとに年々縮小傾向にあるようです。
なお、女性器を奉る大縣神社の豊年祭は別名「於祖々祭(おそそ祭)」と呼ばれ、一方、男性器を奉る田縣神社の豊年祭は別名「扁之古祭(へのこ祭)」とも呼ばれています(2社は付近にあり、同日に開催される)。
豊年祭についての詳しい情報はこちらの記事を参照:【奇祭・大縣神社の豊年祭2015】
梅まつり
大縣神社の境内にある梅園には全国の梅園や神社から奉納された紅白の「しだれ梅」が植えられており、春先になると綺麗な梅の花が咲き誇ります。
そのため、神社では毎年2月中旬から3月にかけて「梅まつり」が行われています。
梅まつりについてはこちらの記事を参照:【大縣神社の梅まつり】
姫の宮
大縣神社の摂社・姫之宮には、主祭神の神裔である玉比売命(たまひめのみこと)を祀っており、古来より女性の守護神として安産・子授け・婦人病・縁結びの御神徳があるとされています。
なお、この玉比売命には倉稲魂命(稲荷神)であるという説もあるようです。
姫石
大縣神社には「姫石」と呼ばれる女陰形の奇石が奉納されており、子宝祈願に御利益があるとされています。
また、この大縣神社の女陰は、田縣神社にある男根と対をなすものであるとも云われているそうです。
境内の見どころ
本殿
大縣神社の本殿です。注連縄が横一直線に張られていることが特徴的です。
また、主祭神の荒魂は、神社の東方に聳える本宮山の山頂の「本宮社」に祀られています。
開運招福鳥居くぐり
大縣神社の開運招福鳥居くぐりです。
建物の中に小さな鳥居(ミニ鳥居)があり、願いを込めて鳥居をくぐると、合格、厄除け、良縁祈願などに御利益があるとされています。しかし、鳥居のサイズが相当小さいため、くぐり抜けるには身体のサイズに気を付ける必要がありそうです。
なお、こうした小さな鳥居は性器崇拝の痕跡が残る神社に多く、最も有名なのが熊本県の粟島神社にあるミニ鳥居です。この神社の祭神は「日本神話」でも小さな神として描かれる少彦名命(粟嶋大明神)なのですが、性器崇拝と少彦名命には何か関連性はあるのでしょうか?
大縣神社の絵馬
大縣神社の絵馬には玉姫命が描かれているようですが、その姿は弁財天と酷似しています。
むすひ池
大縣神社のむすひ池です。
いわゆる水占いの一種を行うことができ、願い事を書いた紙を折って水面に浮かべ、その上にコインを置いて祈願すると、祈願成就を占うことができるとされています。
なお、祈願用紙が早く沈めば願いごとの成就が早く、遅く沈むと縁が遠いとされ、近くで沈むと身近に、遠くで沈むと遠方に縁が有るとされているようです。
えんむすびの石
大縣神社のえんむすびの石です。
ハート形をした座れる石であり、女性は左、男性は右に座って祈願する良縁に恵まれるとされています。
境内社
大国恵比須神社
大縣神社の境内社である大国恵比須神社(おおくにえびすじんじゃ)です。
出雲の神として知られる大国主神と事代主神を主祭神とし、数多くの神々を合祀しています。
大国恵比須神社の祭神
主祭神
・大国主神
・事代主神
合祀
・豊斟渟命(トヨクモヌ)
・高皇産靈尊(タカミムスビ)
・大日靈尊(オオヒルメ):天照大神の別名とされる
・月讀命(ツクヨミ):三貴子の一柱
・天鈿女命(アメノウズメ)
・伊邪那岐命(イザナギ)
・大足彦忍代別命(オオタラシヒコオシロワケ):第12代景行天皇(日本武尊の父)
・天御中主神(アメノミナカヌシ):造化の三神の筆頭
・國底立尊(クニノソコタチ):国常立尊と同神と思われる
・天目一箇命(アメノマヒトツ)
・木花開耶姫命(コノハナサクヤ)
・金山彦命(カナヤマヒコ)
・品陀命(ホムダワケ):第15代応神天皇
・建御雷命(タケミカヅチ)
・大己貴尊(オオナムチ):大国主の別名とされる
・大国主神
・事代主神
合祀
・豊斟渟命(トヨクモヌ)
・高皇産靈尊(タカミムスビ)
・大日靈尊(オオヒルメ):天照大神の別名とされる
・月讀命(ツクヨミ):三貴子の一柱
・天鈿女命(アメノウズメ)
・伊邪那岐命(イザナギ)
・大足彦忍代別命(オオタラシヒコオシロワケ):第12代景行天皇(日本武尊の父)
・天御中主神(アメノミナカヌシ):造化の三神の筆頭
・國底立尊(クニノソコタチ):国常立尊と同神と思われる
・天目一箇命(アメノマヒトツ)
・木花開耶姫命(コノハナサクヤ)
・金山彦命(カナヤマヒコ)
・品陀命(ホムダワケ):第15代応神天皇
・建御雷命(タケミカヅチ)
・大己貴尊(オオナムチ):大国主の別名とされる
楽田神社
大縣神社の境内社である楽田神社(がくでんじんじゃ)です。
楽田出身の英霊が祀られているとされています。
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「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。
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