人文研究見聞録:宗像神社(京都御苑) [京都府]

京都府京都市上京区の京都御苑内にある宗像神社(むなかたじんじゃ)です。

平安遷都の翌年に創建された古社であり、祭神に宗像三女神(宗像大社の神)などを祀っています。

なお、『日本三代実録』にも登場することから国史見在社(六国史に記載のある神社)ともされています。

また、御苑内の西南(裏鬼門)に位置することから、方除けの御利益があるそうです。


神社概要

由緒

社伝によれば、平安遷都の翌年である延暦14年(795年)、桓武天皇の勅命により、藤原冬嗣(ふじわらのふゆつぐ)が筑紫(宗像大社)より皇居鎮護の神として筑前宗像神を勧請し、それを自邸である東京第(東京一条第)の西南隅に祀ったことに始まると伝えられています。また、邸内の東北隅には天石戸開神も祀られていたとされます(由緒は不明)。

なお、当神の鎮座由来は『土右記』にも載せられており、それによれば「小一条第は藤原内麻呂が息子の冬嗣に買い与えた邸宅であるが、その理由は、冬嗣がまだ内舎人であった頃、参内の途中で虚空から宗像大神が呼びかけがあり『父に頼んで小一条第を買って貰え、そこに居住して傍らに宗像大神を祀れば子々孫々にわたって守護しよう』との神託があったためである」とされており、下京区の市比売神社にも類似した縁起が残っているそうです。

また、東京第は嘉祥3年(850年)に清和天皇が誕生した場所であるため、その縁から同天皇の産神・産土神と崇められ、その後、藤原時平の代に倉稲魂神を合祀し、さらに天承元年(1131年)に花山院家が開かれると天石戸開神をも合祀して、同家の守護神とするようになり、建治元年(1275年)になって初めて官社に列したとされます。

しかし、応仁の乱が起こるとその兵火に遭って社殿を悉く焼失し、後に再建したとされます(現在の社殿は江戸期の安政年間に再建されたものとされる)。

そして、明治維新の後に花山院家が転宅したため、邸宅が廃されて社殿のみが残り、明治天皇が東京に移ると御苑内鎮座とされて明治8年(1875年)に府社に列し、戦後に神社本庁に属して現在に至るとされています。

祭神

宗像神社の祭神は以下の通りです。

主祭神

・多紀理比売命(タキリビメ):「日本神話」のスサノオのアマテラスの誓約で生まれた女神(宗像三女神の一)
・多岐都比売命(タギツヒメ):同上
・市寸島比売命(イチキシマヒメ):同上

※上記の三女神は宗像大社の主祭神であり、『日本三代実録』によれば その神と同神とされている

配神

・倉稲魂神(ウカノミタマ):稲荷神(藤原時平の代に合祀された)
・天岩戸開神(あめのいわとあけのかみ):詳細は不明(花山院家が開かれた際に合祀された)
 → 『花山院家記には合祀前の状況を「天石戸開神。大石也。霊有り」と伝える

境内社

人文研究見聞録:宗像神社(京都御苑) [京都府]
花山稲荷社
人文研究見聞録:宗像神社(京都御苑) [京都府]
繁栄稲荷・少将井社・金刀比羅宮
人文研究見聞録:宗像神社(京都御苑) [京都府]
京都観光神社

宗像神社の境内社は以下の通りです。

・花山稲荷社:倉稲魂神(稲荷神)を祀る
 → 付近にある楠は樹齢600年以上ともいわれ、御苑内では最長老の楠とされる
・繁栄稲荷社:命婦稲荷神(稲荷狐)を祀る
 → 『花山院家記』には、藤原基経が守護神として祀ったものと記される
 → 『土右記』には藤原基経の身分が低かった時代、数人の童に捕まって杖で打たれている狐を見かけたので、それを救ってやると、夢にその狐が現れて「住む場所を賜れば、火難などの災害を除く力になる」と誓ったため、現鎮座地に祀って宗像神の眷属としたという
・少将井社:櫛稲田姫神を祀る
 → かつて中京区の少将井・少将井御旅両町の間にあった八坂神社の御旅所を遷祀したもの
・金刀比羅宮:大物主神、崇徳天皇を祀る
 → 文化3年(1806年)10月10日、讃岐丸亀藩主・京極高中が金刀比羅宮を勧請したものとされる
・京都観光神社:猿田彦大神を祀る
 → 昭和44年(1969年)11月1日、観光業者によって道案内の神・猿田彦大神を勧請創祀したものとされる

境内の見どころ

鳥居

人文研究見聞録:宗像神社(京都御苑) [京都府]

宗像神社の鳥居です。

手水舎

人文研究見聞録:宗像神社(京都御苑) [京都府]

宗像神社の手水舎です。

京都らしい風情のあるものになっています。

拝殿

人文研究見聞録:宗像神社(京都御苑) [京都府]

宗像神社の拝殿です。

大楠

人文研究見聞録:宗像神社(京都御苑) [京都府]

宗像神社の大楠です。

樹齢600年以上とされ、京都御苑で最長老の楠といわれています。

料金: 無料
住所: 京都府京都市上京区京都御苑(京都御苑内)
営業: 6:00~18:00
交通: 丸太町駅(徒歩10分)、神宮丸太町駅(徒歩15分)、京都市営バス(烏丸丸太町)
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。