人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

神奈川県川崎市にある「平間寺(へいけんじ)」です。通称「川崎大師(かわさきだいし)」の名で知られています。

本尊には弘法大師(空海)を祀っており、厄除けに御利益があるとされています。そのため、古くから「厄除けのお大師さま」として信仰を集めているんだそうです。

また、正月には初詣の参拝客で大変賑わう寺院としても知られており、毎年の初詣客は全国で5本の指に入るとされています。


寺院概要

縁起

崇徳天皇の時代、川崎で漁猟を生業としていた平間兼乗(ひらまかねのり)の夢枕に高僧が現れ、「海中にある我が像を引き上げて祀るべし」とのお告げが下り、後日、海中へ網を投げ入れたところ、弘法大師の木像が引き揚げられので、その像を洗い清めて供養したそうです。

その際、諸国遊化の途中に訪れた高野山の尊賢上人(そんけんじょうにん)が弘法大師の木像にまつわる話を聞き、兼乗と力を合わせて、大治3年(1128年)に平間寺を建立したとされています。

本尊

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

・弘法大師(こうぼうだいし):平安初期の僧・空海(弘法大師は諡号)
 → 真言宗の開祖(唐に渡って修行し、真言密教をもたらした)
 → 嵯峨天皇・橘逸勢と共に三筆のひとりに数えられる

詳しくはこちらの記事を参照:【空海(弘法大師)とは?】

境内の見どころ

大本堂

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「大本堂(だいほんどう)」です。

本尊である厄除弘法大師を祀り、堂内には稚児大師、救世観音像、不動明王、愛染明王、金剛界曼荼羅、胎蔵界曼荼羅を奉安しています。

また、ここでは毎日護摩が焚かれ、諸願成就が祈願されています。

なお、大本堂大棟(屋根)には菊花の紋章が見えますが、古来より勅願寺に列せられた由縁によって許されている とされています。

大山門

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「大山門(だいさんもん)」です。

京都東寺の四天王像が模刻安置されており、川崎大師の堂塔伽藍を囲う浄域結界の総門であるとされています。

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持国天
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増長天
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広目天
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多聞天

中興塔(八角五重塔)

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「中興塔(ちゅうこうとう)」です。

堂宇が八角形となっているのが特徴の五重塔であり、境内の諸堂宇と調和し、真言の様式に適うように考慮されているため、「八角」とされてるんだそうです。

また、「八角」は最も円に近い建造物の形といわれ、「包容力」と「完全性」を象徴しているとされています。

なお、毎月第一日曜日と21日の縁日に限り内部が拝観でき、内部には弘法大師や釈迦如来をはじめとする諸像や曼荼羅などが奉安されているそうです。

経蔵

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「経蔵(きょうぞう)」です。

本尊として釈迦如来が祀られており、天井には「双龍」や「飛天」などの仏画が描かれています。

また、釈迦如来の前には、巨大な「五鈷杵(ごこしょ、ヴァジュラ)」が安置されており、この点も見どころとなっています。

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)
五鈷杵

「ヴァジュラ」についてはこちらの記事を参照:【金剛杵(ヴァジュラ)とは?】

薬師殿

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「薬師殿(やくしでん)」です。

インド風の堂宇となっていることが特徴であり、中央大塔には法輪が掲げられています。

堂内には薬師瑠璃光如来尊像や十二神将が奉安されており、本尊の分身として「なで薬師」も奉祀されています。

なで薬師」は、撫でることにより身体健全・病気平癒が祈念できるとされており、ピカピカに輝いています。

なお、薬師殿は一種の休憩所にもなっており、堂内には無料の抹茶が振る舞われています(セルフサービス)。

福徳稲荷堂

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「福徳稲荷堂(ふくとくいなりどう)」です。

境内諸堂で唯一、太平洋戦争を潜り抜け残った堂宇であり、五穀豊穣を司る神「倉稲魂神(ウカノミタマ)」を祀っています。

仏教系の稲荷神は、豊川稲荷を代表する「荼枳尼天(だきにてん)」を祀っていることが多いのですが、川崎大師は神道系の稲荷神である倉稲魂命を祀っているようです。

「稲荷信仰」についてはこちらの記事を参照:【稲荷信仰とは?】

聖徳太子堂

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「聖徳太子堂(しょうとくたいしどう)」です。

本尊として聖徳太子像を祀っています。

つるの池

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「つるの池」です。

この池は、元はひょうたんの形であったとされ、かつては多摩川からの水が池に入り、鶴や鴨が悠々と遊んだとされています。

それに因んで、中央の亀を横にした形の岩の上には、三羽の鶴の像が安置されています。

ちなみに、大阪の四天王寺には「亀の池」という池がありますが、どことなくシチュエーションが似ている気がしますね。

やすらぎ橋

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「やすらぎ橋」です。つるの池の上に架かっています。

災難を除き、幸福を招くといわれる朱色に塗られおり、欄干(手すり)には悟りへと向かう段階として、発心(ほっしん)、修行(しゅぎょう)、菩提(ぼだい)、涅槃(ねはん)を表す種子(しゅじ、梵字) 20文字が刻まれています。

しょうづかの婆さん

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「しょうづかの婆さん」です。西解脱門の付近にあります。

「しょうづかの婆さん」とは、人が死後に渡るとされる「三途の川」の渡し賃である六文銭を持たずにやってきた亡者の衣服を剥ぎ取る老婆の鬼「奪衣婆(だつえば)」のことを指し、その別名「葬頭河婆(そうづかば)」が訛ってこの名で呼ばれるようになったとされています。

なお、川崎大師の「しょうづかの婆さん」は、かつてはお台場にあったとされており、「台場の久兵様」や「歯のお地蔵さん」などと呼ばれ、歯の痛みを癒し、容貌を美しくするとして、昔から信仰されてきたとも云われているそうです。

仲見世

人文研究見聞録:平間寺(川崎大師)

川崎大師の「仲見世通り」です。大山門付近の一帯が商店街となっています。

この仲見世では、久寿餅、 せき止飴、だるませんべいなどが名物とされており、特に飴屋の「とんとこ飴切り」という飴切りの実演販売が有名となっているようです。

ちなみに、付近に鎮座する金山神社の「かなまら祭り」の際には、男茎を模った「授かり飴」の販売も行われているようです。

※以上で紹介を終えますが、川崎大師には上記の他にも見どころはあります(不動堂、不動門、大本坊、清瀧権現堂など)。

料金: 拝観無料
住所: 神奈川県川崎市川崎区大師町4-48(マップ
営業: 6:00~17:00、無休
交通: 川崎大師駅(徒歩8分)

公式サイト: http://www.kawasakidaishi.com/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。