愛知県犬山市栗栖にある桃太郎神社(ももたろうじんじゃ)です。

犬山市には独自の桃太郎伝説が存在し、その伝説によれば、桃太郎は『古事記』で黄泉国の鬼を祓ってイザナギを救ったとされる桃の実・大神実命であるとされています。

そのため、神話と昔話を繋ぐ伝承を根拠としている非常に珍しい神社であり、周辺には それを裏付ける地名や古代の祭祀場なども残っているとされています。また、研究によれば、それに基づく文献もあるそうです。

神社自体は、珍妙なオブジェに囲まれた珍スポットという感じですが、神話や民俗学の研究という見地から見て、なかなか興味深い神社であるため、目線を変えると、非常に有意義な情報を得ることができる場所だと思います(宝物庫には、鬼の金棒や化石なども展示されている)。

なお、神社の周辺はキャンプ場にもなっており、桃にちなんだデザートやきびだんごなども販売されています。


神社概要

由緒


『古事記』によれば、イザナギは黄泉国から逃げ帰る途中、死んだ妻のイザナミが差し向けた黄泉醜女(ヨモツシコメ)に追い詰められてしまったとされますが、そこに大きな桃の木があって沢山の山桃が実っていたので、桃の実をもぎ取って三つ投げつけたところ、ヨモツシコメは力を失って退散したとされます。

そのとき、イザナギはその桃の実に対して「今、私を助けてくれたように、これからも我が国の人々が憂瀬(うきせ)に落ちて苦しむ時には助けてくれよ」と言って、桃に「大神実命(おおかむづみのみこと)」という神名を与えたとされ、これが神話において桃の霊力をあらわした最初の説話となっています(詳しくは「黄泉比良坂」を参照)。

また、桃太郎神社のある犬山市には桃太郎伝説があり、それによれば、上記の桃は木曽川の沿岸に流れ着き、その桃から生まれたのが桃太郎とされているため、この伝説における桃太郎はイザナギを助けた大神実命とされています。

そのため、桃太郎神社は大神実命を祭神として祀っており、社名も上記の伝説から付いたものとされます。

なお、神社から0.5kmほど行った場所にある「桃山」は桃太郎が最後に姿を隠したところと伝えられているため、太古から桃山を御神体として仰いできたと云われており、その麓にある「メンヒル」と呼ばれる磐座は古代の祭祀場だったそうです。

そして、昭和5年に桃山から現在地に遷座され、子供の守り神として崇敬を集めているとされています。

※原文では意富加牟豆美命となっている(上記はパンフレットを参照した内容で、『古事記』の原文とは若干異なります)

由緒について詳しくはこちらの記事を参照:【犬山市の桃太郎伝説】

祭神


桃太郎神社の祭神は以下の通りです。

・大神実命(オオカムヅミ):『古事記』に登場する桃の実の神であり、犬山市では桃太郎になったと伝えられる

犬山市の桃太郎伝説にまつわる地名

桃山

犬山市には、桃太郎神社に繋がる独自の桃太郎伝説があり、以下がそれに因む土地とされています。

・【犬山市】古屋敷(ふるやしき):桃太郎を育てたおじいさん、おばあさんの家があった地
・【可児市】鬼ヶ島(おにがしま):悪者(鬼)が住みつき付近を荒らしまわっていたとされる地
・【犬山市】犬山(いぬやま):家来の犬がいた地
・【犬山市】猿洞(さるぼら):家来の猿がいた地
・【犬山市】雉ケ棚(きじがたな):家来の雉がいた地
・【犬山市】敵隠れ(てきがくれ):人を襲う鬼達が隠れ待ち伏せをしていた岩場
・【坂祝町】猿啄城趾(さるばみじょうじ):猿が噛みついて戦ったとされる地
・【可児市】今渡(いまわたり):鬼が桃太郎が乗った船を見つけた地
・【坂祝町】取組(とりくみ):桃太郎と鬼が取っ組み合いをした地
・【坂祝町】勝山(かつやま):桃太郎が勝どきをあげた地
・【各務原市】宝積寺(ほうしゃくじ):鬼から奪った宝を積み上げた地
・【犬山市】桃山(ももやま):桃太郎が最後に姿を隠したとされる地

桃太郎伝説について詳しくはこちらの記事を参照:【犬山市の桃太郎伝説】

桃太郎神社のみどころ

鳥居


桃太郎神社の鳥居です。

周辺には様々なオブジェも点在しています。

桃形鳥居


桃太郎神社の桃形鳥居です。

全国で唯一の桃を模った鳥居となっています。

本殿


桃太郎神社の本殿です。

神社として祈祷なども行われています。

珍妙なオブジェ


桃太郎神社の境内には、珍妙なオブジェが点在しています。

悪運を食べる猿


桃太郎神社の悪運を食べるサルです。

おみくじで悪運を引いた際に、この猿の口に入れると悪運を食べてくれるそうです。

鬼の洗濯岩


桃太郎神社の鬼の洗濯岩です。

桃太郎伝説における洗濯岩とされています。

宝物館


桃太郎神社の宝物館です。

桃太郎伝説にちなむ様々な遺物が展示されています。

詳しくはこちらの記事を参照:【桃太郎神社の宝物館】

料金: 基本無料、宝物館入館料 大人200円 小人100円
住所: 愛知県犬山市栗栖字古屋敷(マップ
営業: 9:30~16:30、無休(社務所・宝物館営業時間)
交通: 犬山遊園駅(徒歩35分、自動車で移動することが望ましい)

公式サイト: http://www.yha.gr.jp/momotaro/shrine.html
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。