人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

京都市上京区にある晴明神社(せいめいじんじゃ)です。

平安時代に活躍した陰陽師・安倍晴明邸宅跡に建つ神社であり、祭神に晴明の神霊が祀られています。

安倍晴明を祀る最も知名度の高い神社であり、境内には晴明や陰陽道にまつわる多くのものが点在しています。

また、御守や御札は、晴明ゆかりの五芒星(セーマン)太極図などがあしらわれる珍しいものとなっています。

そのため、晴明や陰陽道に触れることができる なかなか興味深い神社となっています。


神社概要

由緒

寛弘2年(1005年)、陰陽師として活躍した安倍晴明が亡くなり、2年後の寛弘4年(1007年)、一条天皇は晴明の生前の偉業を讃えて その屋敷跡に社殿を造営し、晴明の御霊(みたま)を祀ったことに始まるとされます。

創建当時の晴明神社は、東は堀川通、西は黒門通、北は元誓願寺通、南は中立売通という広大なものであったとされていますが、応仁の乱の後、豊臣秀吉による都の造営や度重なる戦火に影響で その規模はどんどん縮少し、古書、宝物なども散逸して、しばらくは荒廃していたそうです。

その後、氏子・崇敬者らが整備・改修が行って徐々に復興し、境内地の規模も拡張されて 現在に至るとされています。

祭神

人文研究見聞録:晴明神社 [京都府]

晴明神社の祭神は以下の通りです。

・安倍晴明御霊神(あべのせいめいのごしんれい):平安時代に活躍した陰陽師
 → 社伝によれば、第8代孝元天皇の皇子・大彦命(おおびこのみこと)の後胤であるとされる
 → 朱雀、村上、冷泉、円融、花山、一条の6代天皇に側近として仕えて活躍したとされる
 → 稲荷神の生まれ変わりであるとも云われるため、稲荷神(倉稲魂命)と習合するとも

安倍晴明については こちらの記事を参照:【安倍晴明とは?】

境内社

末社・斎稲荷神社

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社に祀られる末社「斎稲荷神社(いつきいなりじんじゃ)」です。

斎稲荷社・天満社・地主社の3社を合祀しており、稲荷神である倉稲魂命(ウカノミタマ)を祀っています。

なお、齋(いつき)という言葉は、賀茂神社に奉仕する斎王御所「齋院(さいいん)」を指し、そこで祀られていた稲荷神を勧請したことからこの名で呼ばれるとされています。

また、安倍晴明は稲荷神の生まれ変わりとする説があり、各地で稲荷信仰と習合されているようです。

祭神

・斎稲荷社:倉稲魂命(稲荷神)
・天満社
・地主社

関連知識

晴明祭

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社では、毎年の秋に例祭である「晴明祭(せいめいさい)」が行われます。

晴明祭は秋分の日の前日と当日の2日かけて行われ、前日には「湯立神楽」と呼ばれる神楽が奉納されます。

また、当日には「神幸祭」が行われ、神輿行列が周辺地区を練り歩き、境内は多数の露店で賑わいます。

神事に使われるあらゆる祭具に「五芒星」があしらわれていることが見どころです。

詳しくはこちらの記事を参照:【晴明祭】

晴明桔梗

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)と晴明桔梗
晴明桔梗
人文研究見聞録:晴明神社(京都府)と五行
五行

晴明神社には「一の鳥居」をはじめ、境内のあらゆる場所に「晴明桔梗(せいめいききょう)」が刻まれています。

晴明桔梗とは、一筆書きの星型をした いわゆる「五芒星」を指し、陰陽道では魔除けの呪符として伝えられています。陰陽師である安倍晴明は、陰陽道の基本概念となった陰陽五行説における五行(木・火・土・金・水)の象徴として、この印を用いたとされており、この印の意味として五行の働きである相克(そうこく)を表しているとされています。

また、この印は別名「ペンタグラム」や「ソロモンの星」などとも呼ばれ、陰陽道のみならず世界各地で用いられており、その主な意味としては魔除け・守護の象徴とされています。しかし、逆向きに描くことで悪魔の象徴として用いられたともいわれています。

陰陽道についてはこちらの記事を参照:【陰陽道とは?】

境内の見どころ

鳥居

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社の鳥居です。

扁額には社紋の晴明紋(五芒星)が掲げられるという珍しいものとなっています。

日月柱

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社にある「日月柱(にちげつちゅう)」です。

この石柱は、上部に日(太陽)と月(三日月)をかたどった石像が配置されており、「」と「」で陰陽(いんよう)を表現しているとされています。

太極図(陰陽魚)

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社の排水溝の蓋には陰陽を表す「太極図(たいきょくず、陰陽魚)」が描かれています。

この図は太極の中に陰陽が生じた様子を表現しており、陰陽道に影響を与えた道教のシンボルにもなっています。

黒色は「」を表し、下降する気を意味しており、白色は「」を表し、上昇する気を意味しているとされています。

四神門

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晴明神社の「四神門(しじんもん)」です。

この門は、かつての晴明邸の門であり、朝廷からの使いが訪れるとひとりでに開き、出ていくとひとりでに閉まったそうです。

なお、現在は電動での開閉となっています。

狛犬

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)
人文研究見聞録:晴明神社(京都府)
人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社にある「狛犬(こまいぬ)」です。

獅子をかたどった様相を呈しており、境内には5体ほど安置されています。

晴明井

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社にある「晴明井(せいめいい)」です。

この井戸は晴明の念力によって湧き出たとされており、晴明井の湧水は「晴明水」と呼ばれています。飲むと無病息災のご利益があるんだそうです(冬場でも温かく、若干甘かったです)。

ちなみに、茶人として知られる千利休は、茶会の際に晴明水を茶の湯に使っていたという伝承もあります。そのため、豊臣秀吉もその茶を飲んでいたと伝えられているそうです。

厄除桃

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晴明神社の「厄除桃(やくよけもも)」です。

この桃のオブジェは、撫でると厄が祓われ、清々しい気持ちになるとされています。

なお、古代中国の「道教」および、その影響を受けている「陰陽道」の世界では、桃は魔除け・厄除けの果物とされており、古くは「鬼門封じ」として、鬼門とされる東北の方角(艮、うしとら)に桃の木が植えられてきたそうです。

旧・一条戻橋

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晴明神社にある「旧・一条戻橋(きゅう・いちじょうもどりばし)」です。

この橋は、京都府上京区にある「一条戻橋」の復刻版であり、浄瑠璃『信田森女占』では一条戻橋で晴明の父・保名が蘆屋道満に殺害された際、晴明が呪法を駆使して父の保名を蘇らせたという伝説が残されています。

また平安当時、晴明は使役していた式神十二体を橋の下に隠しており、必要に応じて召喚していたという伝説もあるようです。

現在の一条戻橋についてはこちらの記事を参照:【一条戻橋】

式神石像

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晴明神社にある「式神石像(しきがみせきぞう)」です。

晴明が使役したとされる式神のであり、晴明の妻に顔を恐がられたため、一条戻橋の下に封じられていたとされています。

その際、橋を渡る人のことを占う、橋占(はしうら)も行ったと云われています。

御神木

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)
人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社にある「御神木(ごしんぼく)」です。

この樹は、推定樹齢300年といわれる楠(クスノキ)であり、樹皮に触れると冬でも樹の温もりが伝わってきます。

なんとも言えないパワーを感じ取れますので、訪れた際には触ってみてください。

なお、台座(ベンチ)が五角形になっているところも注目です。

安倍晴明公像

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社にある「安倍晴明公像(あべせいめいこうぞう)」です。

肖像画を基にしてデザインされており、夜空の星を見て遠く天体を観測している様子を表現しているんだそうです。

安倍晴明についてはこちらの記事を参照:【安倍晴明とは?】

顕彰板

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晴明神社にある「顕彰板」です。

境内の壁に展示されており、晴明にまつわる伝説が10件ほど紹介されています。

挿絵も付いており、各説話が分かりやすく説明されています。

詳しくはこちらの記事を参照:【安倍晴明の伝説(晴明神社)】

泣不動縁起絵巻 折りつづれ絵馬

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晴明神社にある「折りつづれ絵馬」です。授与所の天井に飾ってあります。

この絵馬には「泣不動縁起絵巻(なきふどうえんぎ)」の中に登場する、邪鬼を祓う安倍晴明の一場面が描かれています。

式神と顔出し看板

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社にある「顔出し看板」です。授与所内に設置してあります。

この看板は、観光の際の記念撮影用に設置してある顔出し看板であり、修学旅行生に人気があるんだそうです。

桔梗庵

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晴明神社の境内にある「桔梗庵(ききょうあん)」です。

晴明神社のお土産をはじめ、安倍晴明や陰陽師にまつわるグッズが販売されています。

ここで販売されている商品は、全て晴明神社公認のものとされています。

陰陽師本舗

人文研究見聞録:晴明神社(京都府)
人文研究見聞録:晴明神社(京都府)

晴明神社の横にある「陰陽師本舗」です。

陰陽師グッズを扱う雑貨店であり、店内には安倍晴明や陰陽道にまつわるグッズ(人形・Tシャツ・パワーストーンなど)が販売されており、修学旅行生に受けそうな品揃えとなっています。

しかし、晴明神社側には「無関係である」とキッパリと断りを入れられているそうです。個人的に「九字の印」が描かれたTシャツは斬新だと思ったため、ここに紹介しておきます。

料金: 参拝無料
住所: 京都府京都市上京区晴明町806番地1(マップ
営業: 9:00~18:00、無休
交通: 今出川駅(徒歩12分)

公式サイト: http://www.seimeijinja.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。