人文研究見聞録:奇祭・大縣神社の豊年祭2015

大縣神社の豊年祭2015に参加してきたので、その様子をレポートしたいと思います。


大縣神社とは?

人文研究見聞録:豊年祭の時の大縣神社本殿

大縣神社とは、尾張国開拓の祖神とされる「大縣大神(おおあがたのおおかみ)」を祀る神社であり、創始は古く、社殿によれば紀元前3年より尾張本宮山頂より現在の地に遷座したとされています。そのため、神社創始から2017年という悠久の歴史を誇る古社とされています。

そして、古来より朝廷をはじめとする大衆の篤い崇敬を受け、事業繁栄・開運厄除の守護神として信仰されているそうです。なお、境内摂社の「姫之宮」は、古来より安産・子授など女性の守護神として崇敬されており、姫之宮の裏手には、女陰(女性器)を模った「姫石」という奇石が奉納されていることで知られています。

人文研究見聞録:大縣神社の姫之宮
姫之宮
人文研究見聞録:大縣神社の姫石
姫石

詳しくはこちらの記事を参照 :【大縣神社】【大縣神社のパワースポット】【生殖器崇拝とは?】


豊年祭とは?

豊年祭とは、「ほうねんさい」または「ほうねんまつり」とも読み、五穀豊穣・万物育成・子孫繁栄を祈願するお祭りであるとされています。特に有名なのが愛知県小牧市で行われる田縣神社の豊年祭であり、大縣神社ではそれと同時期に開催されます(なお、大縣神社から田縣神社までは徒歩40分程度の距離であり、電車も路線で繋がっています)。

また、同名の祭りが沖縄県でも行われているそうです。(豊作を祈願する祭りとして、石垣島周辺で行われる)

なお、大縣神社の豊年祭は別名「於祖々祭(おそそ祭)」、「姫の宮祭り」などとも呼ばれており、女陰(女性器)を模った山車(飾り車)などが出て周辺を練り歩きます。そのため、俗称「まんこ祭り」と呼ばれているのが一般的なようです。

大縣神社の豊年祭の主なタイムスケジュールは以下の様になっています。

大縣神社の豊年祭のタイムスケジュール

  • 10:00~ 子供神輿
  • 11:00~ 稚児行列
  • 11:30~ 稚児祈願祭
  • 12:15~ 献餅車・飾り車・姫宮福娘パレード(今仙電機 ⇒ 大縣神社)
  • 13:00~ 神幸行列(諸钁神社 ⇒ 大縣神社)
  • 13:30~ 尾張太鼓奉納(大縣神社境内)
  • 15:00~ 歌謡ショー
  • 16:00~ 餅まき


豊年祭の見どころ(参加レポート)

今回は田縣神社の豊年祭と同日開催ということもあり、午前中から昼過ぎあたりを目処に参加させていただきました。

11:30ごろに神社到着。祭りともあって、神社周辺には屋台がそこそこ出ています。

人文研究見聞録:大縣神社の豊年祭の様子
屋台の様子
人文研究見聞録:大縣神社の豊年祭の様子
豊年祭当日の境内

神社の境内では稚児祈願祭が行われており、独特の化粧を施された稚児達が祈祷のために行列をなしています。なお、大縣神社の稚児行列は「一生のうちに3度、稚児行列に参加させると幸せな人生を送れる」とされているそうです。

この祭りの一番の目玉は飾り車・神幸行列パレードなので、それまでは周辺を散策します。ちなみに豊年祭は女性の守護神が祀られる「姫の宮」にスポットを当てた祭りだと思われますので、そのあたりを散策するのがベストだと思います。

姫の宮」の周辺には、「開運招福鳥居くぐり」、「むすひ池」、「姫石」などのパワースポットが多数あります。また、子宝祈願の絵馬も見どころです。

人文研究見聞録:大縣神社の開運招福鳥居くぐり
開運招福鳥居くぐり
人文研究見聞録:大縣神社のむすひ池
むすひ池
人文研究見聞録:大縣神社の絵馬
絵馬

こちらの記事もどうぞ: 【大縣神社のパワースポット】


また、大縣神社では「梅まつり」も同時開催されており、境内の裏手にある「梅園」では綺麗な「しだれ梅」が咲き誇っています。行列パレードまでは、こちらでの梅花観賞がとてもオススメですね。

人文研究見聞録:大縣神社の梅園
梅園のしだれ梅

こちらの記事もどうぞ: 【大縣神社の梅まつり】


12:00過ぎ、飾り車・神幸行列パレードのルートに人が集まり始めます。そして、行列パレードが始まると、出発の合図として「のろし」が上がります。ですので、のろしに合わせて動くと良いかもしれません。

・飾り車行列のルート:今仙電機 ⇒ 大縣神社(楽田駅の北西から出発)
・神幸行列のルート:諸鑵神社 ⇒ 大縣神社(楽田駅の北東から出発)

個人的に田縣神社の豊年祭にも参加したかったので、のろしと同時に楽田駅方面へ移動を始めました(なお、神幸行列の境内到着を待っても、田縣神社の豊年祭の見どころである御輿行列には充分間に合うと思われます)。

12:30ごろ、楽田駅周辺で待機。飾り車の行列がゆっくりとルートを進行してきます。

  1. 尾張太鼓トラック
  2. 献餅トラック
  3. 神馬に騎乗する神主
  4. 神主&巫女を乗せたオープンカー
  5. お姫様トラック

と言った流れで、飾り車行列が行われます。

人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(飾り車行列)
1.尾張太鼓トラック
人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(飾り車行列)
2献餅トラック
人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(飾り車行列)
3神馬に騎乗する神主
人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(飾り車行列)
4巫女を乗せたオープンカー

ここで特別見どころなのが何といっても「お姫様トラック」です。このトラックに乗せられているお多福の口が完全に女性器です。しっかりと穴まで開いています。

人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015の見どころ(女性器を模ったお多福が乗るお姫様トラック)
5.お姫様トラック(女性器を模ったお多福を乗せる)
人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015の見どころ(女性器を模ったお多福)
お多福の口に注目

次に通過するトラックには水車が乗せられており、米麦などを扱う会社の広告が載せられています。

人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(水車の乗ったお姫様トラック)
水車を乗せたお姫様トラック

これらは、おそらく「子孫繁栄」と「五穀豊穣」を表現しているんでしょうね。ゆえに豊年祭なのでしょう。

13:00ごろ、ここでも「のろし」が上がり、諸钁神社から神幸行列が出発します(神社の参道付近の歩道橋からは、この行列を上から眺めることができます)。

人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(神幸行列)
神幸行列

先頭に天狗の面を被った猿田彦(サルタヒコ)が立ち、行列を先導します。

人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(猿田彦)
猿田彦(サルタヒコ)

この光景は全国の神幸祭で見られ、日本神話の天孫降臨の際に、サルタヒコがニニギを道案内したことにちなんでいます。なお、サルタヒコそのものも天狗の様な容姿であったとされ、天狗の原型であるともされています。

次に太鼓や笛などの音楽を奏する行列、そして白い衣を被った女性達の行列が続きます。

人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(神幸行列)
猿田彦(サルタヒコ)に続く神幸行列

なお、この衣装は女性器を模ったものであるとされており、これも「子孫繁栄」を表現しているものだと思われますね。

人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015の見どころ(女性器を模った衣装)
女性器を模った衣装

その後、御神輿行列が続き、この時には「お神酒(日本酒)」と「おつまみ(煎餅など)」が振る舞われます。

人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(御神輿行列)
御神輿行列
人文研究見聞録:大縣神社の奇祭・豊年祭2015(お神酒)
お神酒

ちなみに神道の祭りにおける「神酒(みき)」とは、神と同じものを飲食するという意味であり、酒に酔うことで意識を変化させて、神との交流を深めるという意味があります。また、おつまみは「神饌(しんせん)」と呼ばれる神への供え物を指し、神酒と同様に同じものを飲食するという意味が込められています。

これらの行列が境内に到着した後、尾張太鼓奉納 ⇒ 歌謡ショー ⇒ 餅まき という流れで祭りが進行されるようです。

僕の場合は、御神輿行列を後にして田縣神社の豊年祭へ向かいました。ですので、2015年の大縣神社の豊年祭のレポートはここまでです。ご閲読に感謝します。

なお、ギャラリーはそこまで多くなかったですね(田縣神社の方に集まっているものと思われます)。

田縣神社の豊年祭にも併せて参加したい方は、大縣神社の飾り車・神幸行列パレードの見物を終えてから田縣神社へ移動するのがベストでしょう(14:00までに田縣神社に到着すれば充分間に合います。)

こちらの記事もどうぞ: 【天下の奇祭・田縣神社の豊年祭2015】


雑記

もっと以前の大縣神社の豊年祭は、女性器のデザインがとてもリアルだったそうです。一昔前までは、御姫様トラックに乗せられたお多福の顔がプリントしてある幟も奉納されていたと聞きます。

しかし、今ではその表現が曖昧にされており、「子孫繁栄・五穀豊穣」と一目ではわからない祭りになってしまっています。

紀元前より存在する古社である大縣神社が、現在に至るまで女性器を崇拝する祭りを継続しているということには、きっと深い意味があるんだと思います。

そんな古くから受け継がれている祭りが、世間の風潮に合わせて本来の形を失っていってるというのは、とても残念なことですね。

なお、日本における生殖器崇拝は土偶の形象から縄文時代には既に存在するとされており、一説によると、その歴史は旧石器時代からあったとされています。大縣神社に安置される「姫石」も、その名残なのかもしれません。

これは余談ですが、米俵に乗って木槌を振り上げる姿で知られる大黒天(だいこく様)の像は、かつては木槌を持っていない代わりにフィグ・サイン(いわゆるオマンコサイン)をしていたとされ、体が男性器、米俵が陰嚢(金玉)を表現していたとされています(生殖器崇拝を形容していた)。

そのため、かつては子宝の神であるとされており、子作り信仰という独自の民間信仰が存在していたそうです(男女和合で繁栄を表すとされた)。

人文研究見聞録:大黒天像のウンチク(大黒天像は男性器だった)
大黒天像

現在では、主に五穀豊穣(農業)の神として認知されていますが、大黒像には未だに生殖器崇拝の面影が見られますね。

関連記事:大縣神社奇祭


料金: 参拝無料
住所: 愛知県犬山市宮山3
営業: 8:30~16:30、無休
交通: 楽田駅(徒歩20分)

公式サイト: http://ooagata-01.p2.weblife.me/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。