人文研究見聞録:法隆寺の建築美術 [奈良県]

法隆寺は、現存する世界最古の木造建築群として世界遺産にも登録されているほど有名な寺院です。

建立後に多くの手が加えられているものの、未だに創建当時の風格を漂わせる歴史的景観を維持しています。

法隆寺の楽しみ方の一つとして、伽藍の鬼瓦や彫刻などの美術的景観に注目してみるという方法があります。

ですので、今回は そうした法隆寺の美術的な部分について特集してみようと思います。

法隆寺の歴史、謎についてはこちらを参照:【法隆寺】【法隆寺の謎】


法隆寺の手水舎(手水舎の像)


人文研究見聞録:法隆寺の建築美術 [奈良県]

法隆寺には3ヵ所程度(確認した限り)の手水舎(手を洗う場所)があります。

そこにはそれぞれ霊獣と思われる像が安置されています。それについては以下の通りです。

法隆寺の手水舎の像


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中門前
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聖霊院前
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夢殿前

・中門前(龍)
・聖霊院前(龍の首が付いた甕)
・夢殿前(鳥)

これらは、中国の神話において天の四方の方角を司る霊獣である四神を模っているように見えます。なお、この像がいつ設置されたのかについては定かではありませんが、聖徳太子自体はこうした影響を受けてものと思われます。

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四神(白虎・青龍・玄武・朱雀)

それについては、『日本書紀』に聖徳太子の時代に大陸から多くの知識や文化が持ち込まれたと記されており、聖徳太子が師とした慧慈(えじ)も朝鮮半島から渡来した僧でした。

また、聖徳太子が建立した四天王寺は中国における風水の四神相応(しじんそうおう)の思想が見られる伽藍様式となっています。そのほか、聖徳太子が愛用した「七星剣」にも北斗七星や白虎・青龍などの絵が彫られていることから、聖徳太子は古代中国の風水や道教の影響を受けていたと考えられます。

法隆寺の木造彫刻


人文研究見聞録:法隆寺の建築美術 [奈良県]

法隆寺の「五重塔」や「金堂」に代表されるそれぞれの伽藍には、木造彫刻があしらわれている様子が見受けられます。

代表的なものについて、以下にまとめておきました。

法隆寺の木造彫刻(一部)


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邪鬼(五重塔)
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象(金堂)
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龍(金堂)

・邪鬼の木造彫刻(五重塔)
・象の木造彫刻(金堂)
・龍の木造彫刻(金堂)

特に金堂に見られる「登り竜」と「下り龍」は非常に完成度の高いものとなっています。

法隆寺の塑像


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法隆寺には金剛力士像に代表される多くの塑像(そぞう、粘土や石膏を材料として作った像)が安置されています。

特に五重塔の中には、仏教にまつわる説話をテーマにした塑像群が安置されています。

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釈迦入滅のシーン

塑像の謎についてはこちらを参照:【法隆寺の謎】

法隆寺の鬼瓦


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法隆寺の伽藍には数多くの鬼瓦が設置されており、それを探すことだけでも十分楽しめます。

また、紋瓦にも複数の種類があり、それの違いを見つけるのも面白いかもしれません。

以下、自分が発見した限りの鬼瓦の種類と瓦の画像をまとめて載せておきます(全種類ではありません)。

法隆寺の鬼瓦


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鬼(オニ)
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鬼(オニ)
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鬼(オニ)
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鬼(オニ)
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鬼(オニ)
人文研究見聞録:法隆寺の建築美術 [奈良県]
鬼(オニ)
人文研究見聞録:法隆寺の建築美術 [奈良県]
鬼(オニ)
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鬼(オニ)
人文研究見聞録:法隆寺の建築美術 [奈良県]
鬼(オニ)
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鬼(オニ)
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鬼(オニ)
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鯱(シャチ)
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鯱(シャチ)
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獅子(シシ)
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獅子(シシ)
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獅子(シシ)
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兎(ウサギ)
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桃(モモ)
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桃(モモ)
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菊(キク)
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亀?植物?
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植物?
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菊家紋章
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三つ巴
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三つ巴
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法隆寺
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法皇教會

鬼瓦の種類


・鬼(おに)
・鯱(しゃち)
・獅子(しし)
・兎(うさぎ)
・桃(もも)
・菊(きく)
・その他

鬼瓦自体は、パルミラ(シリア)にて入口の上にメドゥーサを厄除けとして設置していた文化がルーツとされています。

そのため、おおむね魔除け厄除けとして用いられているそうです。

なお、鬼瓦は無料ゾーンに点在しているため、瓦探し自体は無料で楽しむことができます。

料金: 五重塔・大宝蔵院・夢殿共通券 一般1,500円、小学生750円、夢殿 300円、他は無料
住所: 奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1
営業: 8:00~17:00(冬季16:30)
交通: 法隆寺駅(徒歩21分)

公式サイト: http://www.horyuji.or.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。