石切劔箭神社(石切さん・下之社) [大阪府]
2015/10/18
大阪府東大阪市にある石切劔箭神社(いしきりつるぎやじんじゃ)です。
「神道石切教」という独自の宗教法人によって運営されている神社※であり、通称「石切神社」もしくは「石切さん」の名で親しまれています。なお、祭神には古代の軍事氏族である物部氏(もののべし)の氏神・饒速日尊(ニギハヤヒ)、可美真手命(ウマシマデ)を祀っており、境内には数々の変わったオブジェが点在する独特の雰囲気を持った神社となっています。
なお、地元では「でんぼ(腫れ物)の神様」として知られる病気平癒に霊験あらたかな神社とされ、患部を撫でながら病気平癒を祈願する「なで守り」という変わった御守を授与しています。また、石切神社の「お百度参り」は全国的に有名であるため、拝殿前では「お百度紐」を持って「お百度石」を往復する多く参拝者の姿が見受けられます。
そのほか、神社周辺に広がる門前通りには「開運」を謳う占い屋などの珍妙な施設が数多く立ち並び、石仏をはじめ、天狗や大仏まで祀られています。なお、門前通りを石切駅方面へ登っていくと、石切神社の奥の院に当たる「石切劔箭神社上之社」が鎮座しています。
※昭和23年に神社本庁から抜けたとされる
石切劔箭神社上之社についてはこちらの記事を参照:【石切劔箭神社上之社】
神社概要
歴史
創建年代は具体的には不詳とされていますが、代々の社家である「木積家」には、皇紀2年(神武天皇即位2年)に生駒山中の宮山に可美真手命が饒速日尊を奉祀したことを神社の起源とし、崇神天皇の時代に本社に可美真手命が奉祀されたとの伝承が伝わっているとされています。
なお、社家の「木積」という姓は本来「穂積(ほづみ)」といい、饒速日尊の六世孫に当たる伊香色雄命(イカガシコオ)がこの穂積姓を初めて名乗ったとされています。そして、この伊香色雄命が大和を中心に物部氏の一統である穂積氏として、大和を中心に勢力を拡大していったとされています(ただし、「穂積氏」については他の説もある)。
祭神
石切劔箭神社の祭神は以下の通りです。
・饒速日尊(にぎはやひのみこと):瓊々杵尊(ニニギ)の兄神に当たり、物部氏の祖神とされる
→ 「徳が高く広く活発で勇猛である者」の意とされる
・可美真手命(うましまでのみこと):饒速日尊の子神に当たる
→ 「立派な徳を有している者」の意とされる
両神併せて「石切大明神」と総称される
→ 「徳が高く広く活発で勇猛である者」の意とされる
・可美真手命(うましまでのみこと):饒速日尊の子神に当たる
→ 「立派な徳を有している者」の意とされる
両神併せて「石切大明神」と総称される
石切劔箭神社の祭神について
石切神社の公式サイトによれば、祭神である饒速日尊(ニギハヤヒ)は天孫降臨で高千穂に天降った瓊々杵尊(ニニギ)の兄神に当たり、大和建国の命を受けて天磐船(あめのいわふね)に乗り、哮ヶ峰(いかるがのみね)に天降ったとされています。
そして、その当時 大和地方で勢力を拡大していた先住民の長髄彦(ナガスネヒコ)の妹である三炊屋媛(ミカシキヤヒメ)と結婚して可美真手命(ウマシマデ)を儲けたとされます。その後、神武天皇が東征してきた際、お互いに天照大神の孫である璽(しるし)を示し合い、大和建国を成し遂げたとされています。
なお、饒速日尊という神名は「徳が高く広く活発で勇猛である者」という意義を持つ名とされ、可美真手命とは「立派な徳を有している者」という意味であるとされています。
上記の内容は『日本書紀』と『先代旧事本紀(旧事紀)』の記述を併せたようなものとなっており、祭神の可美真手命(ウマシマデ)という呼称は『日本書紀』に記されるものとなります(『古事記』『旧事紀』とは異なる)。
また、饒速日(ニギハヤヒ)の尊称が「命」ではなく「尊」とされていることから、どちらかと言えば『旧事紀』を取った尊い天津神であると捉えられているようです(『記紀』では「命」と表記される)。
石切神社の公式サイトによれば、祭神である饒速日尊(ニギハヤヒ)は天孫降臨で高千穂に天降った瓊々杵尊(ニニギ)の兄神に当たり、大和建国の命を受けて天磐船(あめのいわふね)に乗り、哮ヶ峰(いかるがのみね)に天降ったとされています。
そして、その当時 大和地方で勢力を拡大していた先住民の長髄彦(ナガスネヒコ)の妹である三炊屋媛(ミカシキヤヒメ)と結婚して可美真手命(ウマシマデ)を儲けたとされます。その後、神武天皇が東征してきた際、お互いに天照大神の孫である璽(しるし)を示し合い、大和建国を成し遂げたとされています。
なお、饒速日尊という神名は「徳が高く広く活発で勇猛である者」という意義を持つ名とされ、可美真手命とは「立派な徳を有している者」という意味であるとされています。
上記の内容は『日本書紀』と『先代旧事本紀(旧事紀)』の記述を併せたようなものとなっており、祭神の可美真手命(ウマシマデ)という呼称は『日本書紀』に記されるものとなります(『古事記』『旧事紀』とは異なる)。
また、饒速日(ニギハヤヒ)の尊称が「命」ではなく「尊」とされていることから、どちらかと言えば『旧事紀』を取った尊い天津神であると捉えられているようです(『記紀』では「命」と表記される)。
詳しくはこちらの記事を参照:【石切劔箭神社の起源神話】
石切神社境内の見どころ
絵馬殿(楼門)
石切神社の絵馬殿です。
左右には随神が祀られ、中には数々の板絵が展示されています。
また、天辺には剣と矢のオブジェが飾られています。
剣と矢のオブジェ |
これはおそらく、創建神話にまつわる「フツノミタマの劔」と「天羽々矢(あめのはばや)」を象徴しているのでしょう。
絵馬伝前の巨石
石切神社の絵馬殿の前には巨石が安置されています。
しかし、碑文はおろか説明文すらなく、何のために置かれたものなのかは不明です。
親子連牛像
絵馬伝前にある親子連牛像です。
石切神社の神事である「献牛祭」が昭和60年に復活したことに因んで奉納されたものなんだそうです。
なお「献牛祭」とは、農業で使役した牛を労い、牛を飾って五穀豊穣と家内安全を祈願する神事なんだそうです。
この祭りは鎌倉時代から江戸時代かけて盛んに行われ、昭和初期まで続いて一度途絶えたとされています。
余談ですが、菅原道真公を祀る天満宮で牛像が見られることは有名ですが、それ以外の所で見られるのは珍しいです。
畿内においては、此処と上之社および、大阪市の四天王寺、奈良県の石上神宮などで見られます。
その共通点として「物部氏」が挙げられるのですが、物部氏と牛にはどのような関係があるのでしょうか?
角髪を結った随神
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石切神社の絵馬殿に祀られている随神は、角髪(みずら)を結った姿という珍しい形をしています。
これは祭神である饒速日尊(ニギハヤヒ)と可美真手命(ウマシマデ)を象ったものであるとされています。
石鳥居(三之鳥居)
石切神社の石鳥居です。
入口と拝殿前には「お百度石」が安置されており、その間で「お百度参り」を行うことができます。
石切神社のお百度参り
「石切神社のお百度参り」は全国的に有名であり、もはや石切名物と言っても過言ではありません。
そのため、参拝時には本殿と鳥居前の「お百度石」を往来する数多くの参拝客の姿が ほぼ必ず見られます。
また、お百度参りの際には「お百度紐」という紐の束を握って、参った数を確認するのが通例とされているようです。
この「お百度紐」は授与所で扱っており、「お百度参り」を終えたら本殿横の奉納箱に納めることとされています。
お百度紐 |
なお、この「お百度参り」の概要については以下の通りです。
お百度参りとは?
お百度参りとは「本殿前で参拝して入口に戻り、再び本殿前で参拝する…」を百度繰り返す参拝法を指します。
このように熱心に参拝することで「祈願がより早く神のもとへ届く」と云われています。
ただし、その回数は百度に限らず、自分で決めた回数で良いとされています。
重要なのは祈願成就のために一心に参拝することなのだそうです。
なお、御利益についても「実際にやってみれば分かります」という風に説明されています。
お百度参りとは「本殿前で参拝して入口に戻り、再び本殿前で参拝する…」を百度繰り返す参拝法を指します。
このように熱心に参拝することで「祈願がより早く神のもとへ届く」と云われています。
ただし、その回数は百度に限らず、自分で決めた回数で良いとされています。
重要なのは祈願成就のために一心に参拝することなのだそうです。
なお、御利益についても「実際にやってみれば分かります」という風に説明されています。
本殿
石切神社の本殿です。
手前には注連縄の張られた2本の石柱が立ち、その奥に祭神の二柱を祀る本殿が控えています。
なお、裏側に回ると神殿(神体を安置する場所)とみられる社殿が見られます。
この社殿の側には、正六角形が並んだ模様のパネルが配されています。
神殿らしき社殿 |
詳しい理由は不明ですが、この構造は「ハニカム構造」といい、強度に優れた形とされています。
また六角形は亀甲紋としても使用され、「亀の甲羅」を表しているともされます。
また、亀は出雲の象徴とも云われていますが、石切神社と出雲には関係性があるのでしょうか?
御神木
石切神社の御神木です。
樹齢約500年の巨大な楠木であり、 東大阪市の天然記念物に指定されています。
水神社
石切神社の境内社・水神社(みずじんじゃ)です。
祭神には、水神である岡象女神(ミズハノメ)と天水分神(アメノミクマリ)の二柱を祀っています。
なお、周囲の池は「亀の池」とも呼ばれており、亀の甲羅に名前を書いて放すと心願成就するとの伝承があるそうです。
五社明神社
石切神社の境内社・五社明神社(ごしゃみょうじんしゃ)です。
祭神に恵比須大神、大国主大神、住吉大神、稲荷大神、八幡大神の五柱の神々を祀っています。
商売繁盛、大漁成就、五穀豊穣、産業隆盛に御利益があるとされているようです。
神武社
石切神社の境内社・神武社(じんむしゃ)です。
祭神に初代天皇である神倭磐余彦尊(神武天皇)を祀っています。
社伝によれば、神武天皇は神武東征の際に巨石を蹴り上げて武運を占ったと伝えられているそうです。
そして、その巨石が「神武天皇の蹴上石」として祀られているとされています。
ちなみに、この伝承と酷似した説話が『日本書紀』の景行天皇記に記載されています。
遥拝所
石切神社の遥拝所です。
鳥居の方向から上之社の遥拝所であると思われます。
大祓所
石切神社の大祓所(おおはらえど)です。
本殿付近に位置しており、祓を行う場所とされています。
神火祭場
石切神社の神火祭場(しんかさいじょう)です。
神聖な火を起こす施設であり、八角形の形をしています。
神楽殿
石切神社の神楽殿です。
祭礼や神事の際に使用されます。
乾明神社
石切神社の境内社・乾明神社です。
祭神に應壅乾幸護彦(おうよういぬいこうごのみこと)を祀っています。
この祭神は、元はこの地方の庄屋であった乾市良兵衛という人物であるとされています。
この人物は人望に篤く、江戸中期に飢饉と重税に喘ぐ人々の代表としてお上に直訴し、極刑に処されたそうです。
その後、代官であった小堀家によって此処に丁重に祀られたとされています。
なお、難問を解決に導く頭脳明晰な人物だったことから、現在は知恵と学問の神として崇敬されているそうです。
社殿のアップ |
一願成霊尊
石切神社の一願成霊尊です。
一生に一度だけの願いごとを叶える神を祀っているとされています。
穂積神霊社
石切神社の境内社・穂積神霊社(ほづみしんれいしゃ)です。
かつての穂積堂の神霊を祀っており、病魔災難除、学問向上の神として篤く崇敬されているそうです。
なお、社殿の手前までは複数の鳥居が立ち並び、一見、稲荷社と思わせるような様相を呈しています。
複数の鳥居 |
また、周囲には蛙像が安置され、社殿の前には奇石が3つ並べて置かれています。
この奇石の内、真中の真球形の石には「九頭神」と彫り込まれています。
3つの奇石 |
しかし、これらについての案内板は無く、詳細は不明です。
「九頭」といえば「九頭竜」が想起されますが、これは「九頭竜伝承」と関係のあるものなのでしょうか?
蛙の像
石切神社の蛙の像です。穂積神霊社の付近に安置されています。
蛙の像といえば、三重県の夫婦岩で有名な二見浦ではサルタヒコの神使として知られています。
また、東京では平将門公の首塚、大阪では多数の巨石に囲まれた磐船神社にもありました。
それらとの関連性は不明ですが、磐船神社の蛙像とは何か関係があるように思います。
岩に刻まれた蛙 |
祈り亀
石切神社の「祈り亀」です。
石造りの小さな社殿に、ピンク色の小さな亀が多数奉納されています。
これは亀に願いを託して祈るというものであり、願いを記した紙を亀の腹に納めて奉納すると願いが叶うとされています。
また、お礼参りの折には坂の上に鎮座する上之社に「お礼亀」を治めることとされているようです。
多数の祈り亀 |
鶴の像
石切神社の「鶴の像」です。
社務所付近に色付きと色無しのものが複数体安置されています。
具体的な説明はありませんが、祭神の可美真手命は鶴に乗って国見をしたという伝承が島根県に残されています。
その他のオブジェ
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石切神社には上記以外にも色々なオブジェが安置されています(社務所前に多い)。
・二宮金次郎
・狸の像
・馬像(元競走馬のイシキリツルギヤ号)
・不明(武器的なもの)
・狸の像
・馬像(元競走馬のイシキリツルギヤ号)
・不明(武器的なもの)
確認した限り、牛、蛙、亀、鶴、狸、馬の6種類の動物像がありました(手水舎の龍と狛犬を除く)。
また、人物(随神を含む)や武器類のオブジェを含めると さらに種類は増えます。
未発見のものもあるかもしれませんので、参拝の折に探してみると面白いかもしれませんね。
料金: 無料
住所: 大阪府東大阪市東石切町1-1-1(マップ)
営業: 終日開放
交通: 新石切駅(徒歩9分)、石切駅(徒歩13分)
公式サイト: http://www.ishikiri.or.jp/
住所: 大阪府東大阪市東石切町1-1-1(マップ)
営業: 終日開放
交通: 新石切駅(徒歩9分)、石切駅(徒歩13分)
公式サイト: http://www.ishikiri.or.jp/
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「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。
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