人文研究見聞録:綱敷天神社 御旅社(梅塚天神) [大阪府]

大阪市北区にある綱敷天神社 御旅社(つなしきてんじんしゃ おたびしゃ)です。

綱敷天神社の御旅社であり、平安時代に菅原道真公の御霊を祀った梅塚天満宮を前身としています。


神社概要

由緒

由緒書によれば、延喜元年(901年)に右大臣であった菅原道真公が無実の罪により太宰府に左遷されることになり、その途中で当地に立ち寄って、船綱を円く円座状に敷き、咲き誇る紅梅を眺めて休憩したとされます。

この時、道真公は追従していた白太夫(度会春彦)の一族らに「この地に留まって戻る日まで待つように」と遺訓を残し、白江の姓・自筆の御影・船綱を与えて九州太宰府へと旅立ったそうです。

そして、残された白江氏は道真公の遺訓に従って当地に留まり、紅梅の樹下に建てた小祠に道眞公の御霊を祀って「梅塚天満宮」と称したとされ、御旅社は この梅塚天満宮に始まるとされています。

その後、正暦4年(993年)に道真公の冤罪が晴れると、当地に改めて社殿が建てられることになり、菟餓野の神野太神宮(現在の綱敷天神社)と梅塚天満宮が合祀され、道真公の綱敷の故事に因んで「綱敷天神社」と称したとされています。この際に梅塚天満宮は綱敷天神社の御旅所となったそうです。

ちなみに、「キタ」の語源は「綱敷天神社が中世に北野天神社(喜多埜天神社)と呼ばれたこと」に因み、古くは「埋田」と表記された「梅田」は「道真公が愛でた紅梅」または「梅塚天満宮」に因むといわれています。

なお、由緒書による説明は以下の通りです。

【綱敷天神社御旅社 御由緒】

当宮は社号を「綱敷天神社 御旅社」と号し、今から一千年ほど昔の延喜元年(901年)に、学者であり政治家でもあらせられた菅原道真公が、無実の罪で京都より九州の大宰府へと左遷され、その途次に当地に お立ち寄りになられ、この地で今を盛りと咲いていた紅梅に目を留められました。それを坐って ご覧になるため、乗ってこられた船の艫綱(陸と船を繋ぐ綱)を円く円座状に敷いて即席の御座となされて ご覧になり、一時の休息を得られた故事に由縁する神社です。

この時、古くから従臣達に、これ以上の苦難を続けさせることを憐れに思し召され、この地に留まるよう仰られた後、道真公は九州の大宰府へと旅立たれました。残された従臣達は、道真公の命に従い、道真公のお帰りを待ち続ける事とし、愛でられた紅梅の下に小祠を構え、梅塚天満宮と号し、道真公の神霊をお祀りしました(創建当時は現在の太融寺町あたりに鎮座していたといわれています)。

道真公の死後、京都では天変地異が相次ぎ、道真公の祟りと恐れた朝廷より道真公に「天満大自在天神」の神号が贈られ、道真公は天神さまとなられました。この時、各地に天神社が創建され、その際に、当地にも社殿を建立する事となり、朝廷の勅旨により、梅塚天満宮は近くに鎮座する嵯峨天皇をお祀りする お社「神野太神宮(現在の綱敷天神社 御本社)」と合祀され、社号を道真公の「綱を敷く」という故事に因み「綱敷天神社」と改め、神野太神宮を御本社に、梅塚天満宮は その御旅所となりました。

この御旅所とは、御神霊が一時的に鎮まられます社殿の事であり、祭礼の折に神輿などが立ち寄る「仮の神社」でありますが、当神社の御本殿と御旅所は元々別々の神社であり、御祭神も別であったことから、常に御祭神の坐す御旅所という事で、正式には御旅社と号しますが、現在は御旅所の通称で親しまれております。

御祭神に天神様を祀る由縁から、中世には全国の天神社の総本社である京都・北野天満宮に因み、北野(喜多埜)天神とも呼ばれ、現在の大阪駅周辺の俗称であるキタの語源ともなったといわれます。また、道真公の愛でられた紅梅に因み、それまで埋田と呼ばれた地域が後世になって梅田という地名になったともいわれています。

明治5年に茶屋町の氏子より土地の寄進があり、現在の場所に移り、氏神さまとして奉祀され、梅田キタの氏神様として慕われ今も昔も変わらず、梅田の街を行き交う人々を見守られておられます。

祭神

綱敷天神社 御旅社の祭神は以下の通りです。

菅原道真公(すがわらのみちざね)平安中期の政治家(死後、天満天神として信仰される)

境内社

人文研究見聞録:綱敷天神社 御旅社(梅塚天神) [大阪府]

綱敷天神社 御旅社の境内社は以下の通りです。

・玉姫稲荷神社:祭神は女神とされる(芸能上達・良縁・商売繁盛・無病息災・家内安全の守護神とされる)

境内の見どころ

鳥居

人文研究見聞録:綱敷天神社 御旅社(梅塚天神) [大阪府]

綱敷天神社 御旅社の鳥居です。

臥牛像

人文研究見聞録:綱敷天神社 御旅社(梅塚天神) [大阪府]

綱敷天神社 御旅社の臥牛像です。

社殿

人文研究見聞録:綱敷天神社 御旅社(梅塚天神) [大阪府]

綱敷天神社 御旅社の社殿です。

料金: 無料
住所: 大阪府大阪市北区茶屋町12-5(マップ
営業: 終日開放
交通: 阪急梅田駅(徒歩4分)、大阪駅(徒歩9分)

公式サイト:http://www.tunashiki.com/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。