人文研究見聞録:石津太神社のやっさいほっさい(泉州の奇祭) [大阪府]

大阪府堺市にある石津太神社では、毎年12月に「やっさいほっさい」という祭が行われます。

泉州の奇祭」とも呼ばれ、火の中を人が駆け抜けるという奇抜な内容が見どころとされています。

2017年に この祭に参加してきたので、参加レポートを以下にまとめてみたいと思います。

概要

石津太神社について


人文研究見聞録:石津太神社のやっさいほっさい(泉州の奇祭) [大阪府]

石津太神社(いわつたじんじゃ)は大阪府堺市西区に位置する神社であり、孝照天皇7年(紀元前469年)に創建されたという古い歴史を持つことから「我国最古の戎社」ともいわれいます。

また、石津川北岸にある「御旅所(当社発祥の地)」は祭神の蛭子命(ヒルコ)が漂着した場所であると伝えられ、鳥居の前には蛭子命が置いたと伝わる「五色の石(当社の御神体)」、境内には蛭子命が腰をかけたと伝わる「夷神之御腰掛石」があります。

詳しくはこちらの記事を参照:【石津太神社】

やっさいほっさいとは?



やっさいほっさいとは、毎年12月14日に行われる石津太神社の神事であり、白装束の男衆が火の中を駆け抜けるという特殊な内容から「泉州の奇祭」と呼ばれています。

この神事は、石津太神社の創祀に関わる「昔、蛭子命(ヒルコ)が石津川河口部北岸(現在の御旅所)に漂着した時、助けに向かった漁師の人々が108束の薪を集めて火を焚き、蛭子命の身体を暖めて迎えた」という伝承に基いて行われています。

そのため、神事は伝承に則ったものであり、主に神社参道にとんど(108束の薪)を積み上げる「神木組上」、とんどに点火する「火付け神事」、とんどを平らにする「火伏せ神事」、戎神役の人を担いで火の中を渡る「火渡り神事」が行われます。

この やっさいほっさい は、えびす信仰と修験道が融合した特殊神事といわれており、江戸中期から現在まで行われ続けているそうです。なお、堺市の無形民俗文化財にも指定されており、当日には多くの見物客で賑わいます。

当日のスケジュール


人文研究見聞録:石津太神社のやっさいほっさい(泉州の奇祭) [大阪府]

境内の案内板による やっさいほっさいのスケジュールは以下の通りです。

・13:00:神木組上げ清祓い
・14:00:例大祭
・14:30:御旅所祭
・15:00:振舞い厄除けぜんざい
・20:00:火付け神事
・20:30:火伏せ神事
・21:00:火渡り神事


参加レポート

当日夕方の境内の様子(17:00ごろ)


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どんど前
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鳥居前
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拝殿前
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屋台

今回は、やっさいほっさい当日の17:00頃に神社に到着しました。

神社参道には既に とんど(神木)が組上げられており、周辺には見物客もチラホラ見られます。

また、参道の一角には屋台も出ており、境内一円は祭りの雰囲気という感じです。

なお、境内にはステージが設けられており、ミュージシャンによる演奏も行われていました。

当日夜の境内の様子(19:00~)


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一の鳥居前
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とんど周辺
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二の鳥居前
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19:30頃のパフォーマンス

19:00頃になると、境内にぞくぞくと人が集まってきます。

時間が経つにつれて身動きが取りづらくなるので、あらかじめ食事を済ませておくとよさそうです。

19:30頃になると、とんどの前で よさこい踊りなどのパフォーマンスが行われます。

19:50頃から神事の説明や注意点などのアナウンスが流れ始めます。

火付け神事(20:00~)


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点火前のどんど
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点火後、ワラで煽ぐ
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すぐに火がまわる
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火柱が立つ

20:00頃になると、手にワラを持った白装束の男衆が とんどの周りを取り囲みます。

しばらくすると時太鼓という太鼓が鳴り、これを合図に境内の明かりが全て消えます(真っ暗闇)。

その後、祝詞が唱えられ、とんどに点火する「火付け神事」が始まります。

点火が終わると、ワラを持った男衆が「やっさいほっさい」の掛け声とともに火を扇ぎ始めます。

すると、あっという間にとんどに火がまわり、やがて巨大な火柱が立ちます。

この時、周囲10~20メートル辺りは非常に熱くなり、白煙とともに火の粉が周辺に舞い上がります。

そして、熱々の燃えカスが周辺に降りそそぎます(服が溶けている人も見られる)。

この熱さは想像を遥かに超えるので、とんどに近づきすぎるのは非常に危険です(風向きにも注意)。

また、人だかりで身動きも取りづらくなるので、予め安全な場所を確保しておく必要があります。

火伏せ神事(20:30~)


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とんどが燃え崩れる
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竹入れを行う
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火床が整えられる
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神職によって祝詞が詠まれる

燃え続けるとんどを眺めること30分後、アナウンスにて火伏せ神事の案内が流れます。

なお、とんどが燃え崩れる際に倒れた方向が陸側なら豊作、海側なら豊漁となると言われています。

その後、男衆らによって竹でとんどを平らにする「竹入れ」という作業が行われます。

この時にも「やっさいほっさい」という掛け声と共に、燃え盛るとんどに竹が挿し込まれます。

この作業を数度繰り返してとんどを平らにし、火渡りのための「火床」を作ります。

火床が整うと、神職が火床の前に立って祝詞を詠み上げて「火伏せ神事」が完了します。

この火伏せ神事を行うことで、火を伏せて火難が防がれるとされています。

火渡り神事(21:00~)


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戎役が火渡り
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火渡りの様子1
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火渡りの様子2
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火渡りの様子3

火伏せ神事が終わると、やっさいほっさいの一番の見所である「火渡り神事」が行われます。

まずは 戎役(神人・山伏とも呼ばれる)が三人の男衆に抱えられて登場します。

そして鳥居側の火床の前に立ち、本殿に向かって火の中を走り抜けます。

これを三度繰り返し、その後 神社の周りを三周するそうです。

戎役が渡り終わると、他の男衆も次々と火床の上を駆け抜けていきます。

この時に駆け抜ける人の周りに火の粉が舞い上がり、まるで火の中に人がいるように見えます。

危険な行為なのでしょうが、見る分には何とも幻想的に見えてしまいます。

見物客の火渡り(21:15~)


人文研究見聞録:石津太神社のやっさいほっさい(泉州の奇祭) [大阪府]
水が撒かれる
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見物客用の火床
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見物客による火渡り
人文研究見聞録:石津太神社のやっさいほっさい(泉州の奇祭) [大阪府]
炭を拾う見物客

21:15頃、男衆によって火床に水が撒かれます。

大まかな消火が行われたら、見物客の火渡りが許可されます。

以前は男衆と同様に火床を渡れたようですが、2017年の場合は消火後に渡れるようになっています。

見た感じ安全と思える程度の消火が行われますが、まだ赤々とした燃えカスが残った状態です(靴底が溶けるかも?)。

なお、火渡りを行うと今年1年の穢れを祓うことができると言われています。

また、とんどの燃えカスは痛むところに塗ると治り、歯痛によく効くと信じられているそうです(拾う人が多い)。

備考

注意点



やっさいほっさいの見物は危険が伴うので、注意点を以下にまとめておきます。

・場所:とんどの熱さは強烈なので、車付近など熱くなると危険な場所は避ける(熱すぎて車から煙が出ていた)
・服装:ポリエステルなどの熱に弱い素材の服は、熱で溶けてしまうことがある(燃えカスで溶けている人もいた)
・風向:風が強い場合、風下にいると強烈な熱波を受けることになるため、風上で見物すること
・備考:神事が始まると人混みで移動が難しくなる(逃げられる余裕のある場所で見物するとよい)

当日の服装



やっさいほっさいの見物時の服装について以下にまとめておきます。

・防寒着:パーカー、ジャンパー、コートなど(綿・ウール素材のもの)
・ズボン:ジーンズ、綿パン
・履 物:スニーカー(動きやすいもの)

※燃えにくい素材の服装が良い

料金: 無料
住所: 大阪府堺市西区浜寺石津町中4丁12-7(マップ
時間: 20:00~21:30(神事自体は13:00~)
交通: 石津駅(徒歩3分)、石津川駅(徒歩5分)

公式サイト:https://www.city.sakai.lg.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。