人文研究見聞録:伊雑宮の御料田 [三重県]

三重県志摩市磯部町上之郷にある伊雑宮の御料田(いざわのみやのごりょうでん)です。

皇大神宮(内宮)の別宮である伊雑宮(いざわのみや)に属する神田であり、毎年6月24日には伊雑宮に奉納する米の田植えを行う御田植式(おたうえしき)が行われます。

なお、この御田植式は、香取神宮、住吉大社と併せて日本三大御田植祭に数えられるそうです。

また、伊雑宮の御田植式では磯部の御神田(いそべのおみた)という民俗芸能が行われることでも知られており、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

伊雑宮についてはこちらの記事を参照:【伊雑宮】


神田

人文研究見聞録:伊雑宮の御料田 [三重県]

御料田の風景です。

非常に神々しい景観となっています。

黒木の鳥居

人文研究見聞録:伊雑宮の御料田 [三重県]

御料田の前には黒木の鳥居(皮付きの木の鳥居)が立っています。

これは神殿の無い所で神事を行う場合に用いられる珍しいものなのだそうです。

磯部の御神田

人文研究見聞録:伊雑宮の御料田 [三重県]

御料田で毎年6月24日に行われる御田植祭では、磯部の御神田(いそべのおみた)という伝統的な田楽が奉納されます。

その起源は古く、踊込唄に「昔、真名鶴磯部の千田に稲穂落したそのまつり」とあることから、磯部の伝承にある「鶴の穂落し」の故事に依るものと考えられており、平安末期から鎌倉初期に行われ始め、現在の形になったのは室町時代と伝わっているそうです。

また、その内容は、勇壮な竹取の後、一転のどかな田楽に合わせた御田植えとなり、伊雑宮の一の鳥居に向けて踊り込み、最後に境内で千秋楽の舞が行われて幕を閉じるとされています。

そうした独特な御田植神事は非常に貴重なものであるとされ、国の重要無形文化財にも指定されています。

ちなみに、神事の行われる6月24日は、倭姫命の巡幸の際に七本のサメが野川を遡上して伊雑宮の鎮座地を示したという「七本鮫」の伝承に基づくとされ、その伝承に則って毎年この日には七本の鮫が伊雑宮に参詣するとされています。

七本鮫と龍宮伝説

人文研究見聞録:伊雑宮の御料田 [三重県]

伊雑宮には、御田植祭の日に七本の鮫が的矢湾から川を遡って伊雑宮の大御田橋まで上ってくるという伝説があり、大御田橋からは蟹や蛙に化身して伊雑宮に参詣するとも云われています。

なお、この七本鮫は伊雑宮もしくは龍宮の使いとされ、七本のうち一本は殺されため、今は六本とされています。また、その伝説に則って、この日は志摩の漁師および海女たちは海に入ることを忌み、伊雑宮に参詣するそうです。

七本鮫の磯部参り

旧6月24日には、太平洋の大海原から的矢湾を通って、七本の鮫が列をなして伊雑宮の大御田橋まで上ってくるという言い伝えがある。鮫は賢い魚で、通るとき「今日はお日柄もようて、磯部さんも大にぎわいでな」と言って挨拶をして行くという。

ところがある年、一人の漁師が伊雑宮にお参りした帰りの鮫を見つけ、銛で突いて殺してしまった。残りの鮫は怒って仇討のために漁師を噛み殺した。それからは六本の鮫が毎年お参りに来るという。

なお、志摩には他の七本鮫の民話もあるとされ、その他にも巨人伝説(ダンダラボッチ)ギリシア神話に類似する伝承など、数々の奇妙な伝説・伝承が存在するとされています。

料金: 無料
住所: 三重県志摩市磯部町上之郷
営業: 終日解放
交通: 上之郷駅(徒歩6分)
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。