人文研究見聞録:太陽の塔 [大阪府]

大阪府吹田市の万博記念公園にある太陽の塔(たいようのとう)です。

1970年の大阪万博に際し、岡本太郎が制作した芸術作品であり、現在も万博記念公園のシンボルとして親しまれています。

また、この謎めいた姿形から様々な説が唱えられ、現在まで にいくつかのフィクション作品にも引用されています。

特に最近では漫画『20世紀少年』の「ともだちの塔」のモデルになったことで有名です。


概要

人文研究見聞録:太陽の塔 [大阪府]

太陽の塔は芸術家・岡本太郎が制作した芸術作品であり、岡本太郎の代表作の1つとして知られています。

昭和45年(1970年)に大阪府吹田市で開催された日本万国博覧会(EXPO'70・大阪万博)の会場に設置され、現在でも その跡地である万博記念公園のシンボルとして人気を集めています。

なお、コンセプトについては諸説ありますが、当時の記者会見では「高さ60mの『(仮称)生命の樹』を制作し、その内部は『過去・現在・未来』の三層構造になる」と岡本太郎より発表されたそうです。

また、一説には岡本太郎が飼っていたカラスがモデルになっているとも言われています。

構造

人文研究見聞録:太陽の塔の黄金の顔(第一の顔)
黄金の顔(第一の顔)
人文研究見聞録:太陽の塔の太陽の顔(第二の顔)
太陽の顔(第二の顔)
人文研究見聞録:太陽の塔の黒い太陽(第三の顔)
黒い太陽(第三の顔)

太陽の塔の外観には「3つの顔」があり、内部には「生命の樹」と呼ばれる巨大なモニュメントが中心に位置するとされます。また、表面には多種多様な動植物の模型が張り付けられ、当時は「第4の顔」も設置されていたそうです。

外観

・塔の高さ:70m
・腕の長さ:25m
・底部直径:20m
・黄金の顔:直径10.6m、目の直径2m(未来を表す)
・太陽の顔:直径12m(現在を表す)
・黒い太陽:直径8m(黒い太陽)

内観

・生命の樹:高さ41m(生命の進化を表現したオブジェ)
・第4の顔:直径3m、全長13m(地底の太陽(太古の太陽)人間の祈りや心の源を表す)
・展示模型:原生類時代、三葉虫時代、魚類時代、両生類時代、爬虫類時代、哺乳類時代の生物模型

内部のテーマ

・地下:過去、根源の世界、生命の神秘をテーマとする
・地上:現在、調和の世界、現代のエネルギーをテーマとする
・空中:未来、進歩の世界、分化と統合(組織と情報)をテーマとする

天岩戸説

人文研究見聞録:太陽の塔 [大阪府]

「日本神話」には「天岩戸」という以下の様な神話があります。

天岩戸神話

誓約で身の潔白を証明したスサノオは高天原に居座り、田を壊して溝を埋めたり、御殿に糞を撒き散らしたりと数々の乱暴を働いた。それに対して他の神々がアマテラスに苦情を訴えると、アマテラスはスサノオを庇ってその罪を問わなかった。

しかし、アマテラスが機屋で衣を織っていたとき、スサノオが機屋に皮を剥いだ馬を落とし入れたため、驚いた服織女が梭で自らを突いて死んでしまった。このことでアマテラスは天岩戸に引き篭り、高天原も葦原中国も闇に包まれて様々な禍が発生した。

そこで、八百万の神々が天の安河の川原に集まり、アマテラスを岩戸から出す方法を思案した。そして、思金神の案により、常世の長鳴鳥(鶏)を集めて鳴かせ、賢木(さかき)の枝に八尺瓊勾玉と八咫鏡と布帛を掛け、御幣と祝詞を奉じ、アメノウズメが岩戸の前で踊ると、高天原が鳴り轟くように八百万の神が一斉に笑った。

これを聞いたアマテラスは天岩戸の扉を少し開け、外の様子を窺っていると八咫鏡に映る自分の姿が見えた。そこで、その姿をもっとよく見ようと岩戸をさらに開けると、隠れていたアメノタヂカラオがその手を取って岩戸の外へ引きずり出し、すぐに岩戸の入口に注連縄を張って封印した。

こうしてアマテラスが岩戸の外に出てくると、高天原も葦原中国も明るくなった。そして、八百万の神は相談し、スサノオに罪を償うための沢山の品物を献上させ、髭と手足の爪を切って高天原から追放した。

※内容は大分要約しています

太陽の塔の外観は、この天岩戸神話に登場する賢木(真榊)を象徴しているという説があり、それによれば、第一の顔は「アマテラス」、第二の顔は「鏡に映ったアマテラス」、第三の顔は「スサノオ」を表現していると言われています。

たしかに真榊と太陽の塔の形は良く似ており、神話において真榊を用いた儀式が初めて登場するのが「天岩戸神話」であるため、もしかすると太陽の塔には日本神話にインスパイアされた部分があったのかもしれません。

岡本太郎について

人文研究見聞録:太陽の塔 [大阪府]

岡本太郎(おかもとたろう)は昭和期を代表する日本の芸術家で「芸術は爆発だ!」というフレーズで有名です。

1911年2月26日に現在の神奈川県川崎市高津区で生まれ、父は漫画家の岡本一平、母は作家の岡本かの子という作家一家にて育ち、戦時中から肖像画など創作活動を始め、戦後より本格的に芸術家としての活動を始めたとされます。

なお、1951年には当時 考古学の遺物という扱いであった「縄文火焔土器」に美術的価値を発見し、「縄文土器論」を発表したことで、日本美術史は縄文時代から語られるようになったそうです。

また、1970年に代表作である「太陽の塔」を製作した後、テレビのバラエティ番組で人気を博し、晩年には所蔵していた芸術作品のほとんどを川崎市に寄贈したとされ、それらは現在 川崎市岡本太郎美術館にて所蔵・展示されています。

フィクション

人文研究見聞録:太陽の塔 [大阪府]
コンパイラの太陽の塔
人文研究見聞録:太陽の塔 [大阪府]
ともだちの塔

太陽の塔は「コンパイラ」や「20世紀少年」などのマンガに登場しています。

特に「20世紀少年」で扱われた際に有名になり、2009年には作品とコラボして一時的に「ともだちの塔」になっています。

若い太陽の塔

人文研究見聞録:太陽の塔 [大阪府]

愛知県犬山市の日本モンキーパークには、太陽の塔の一年前に造られたとされる「若い太陽の塔」があります。

料金: 一般250円 小・中学生70円(入場料)
住所: 大阪府吹田市千里万博公園マップ
営業: 9:30~17:00、水曜日休業(4月~GW、10月~11月末無休)
交通: 万博記念公園駅(徒歩8分)

公式サイト: http://www.expo70.or.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。