五條宮 [大阪府]
2015/08/26
大阪市天王寺区にある五條宮(ごじょうのみや)です。
祭神に第30代敏達天皇(びだつてんのう)を祀っており、橘氏の祖神を祀る全国唯一の神社とされています。
神社概要
由緒
由緒書によれば、日本最古の都※・難波京の五條筋に当たる場所であり、敏達天皇が皇太子時代に居住した邸宅跡であったとされます。
神社としては、四天王寺建立の折(593年頃)、四天王寺内の施薬院(現・薬局)および療病院(現・病院)の鎮護として医道の祖神である五条大神、少彦名命(スクナヒコナ)を祀ったことに始まるとされ、後に敏達天皇社と改められ、東成郡五条村の鎮守となったとされています。
また、鬼門・火災除けの神社としても信仰されたそうです。
なお、由緒書には以下のように記されています。
由緒
当宮は橘氏の祖神を祀る全国唯一の神社として、また、鬼門除の神、火難除の神としても遠近の信仰厚く、この地 支那(中国大陸)の唐制による我が国最古の都、難波京の五條筋にあたり祭神の皇太子時代の五住居跡とも傅元られ古今を通して大阪の中心である当地に御鎮座広く、崇敬者が多い。
当宮は橘氏の祖神を祀る全国唯一の神社として、また、鬼門除の神、火難除の神としても遠近の信仰厚く、この地 支那(中国大陸)の唐制による我が国最古の都、難波京の五條筋にあたり祭神の皇太子時代の五住居跡とも傅元られ古今を通して大阪の中心である当地に御鎮座広く、崇敬者が多い。
※都:皇居を中心とする都市と定義する(これ以前は○○京ではなく、○○宮という概念であったとされる)
祭神
五條宮の祭神は以下の通りです。
主祭神
・敏達天皇(びだつてんのう):第30代天皇
・敏達天皇(びだつてんのう):第30代天皇
敏達天皇とは?
敏達天皇(びだつてんのう)とは第30代天皇であり、聖徳太子の叔父、推古天皇の夫に当たります。
敏達天皇の父・欽明天皇の時代に日本に仏教が伝来するのですが、その時期より、古来より宮中祭祀を担ってきた神道を推す勢力と、外来よりもたらされた仏教を推す勢力に分かれ、二派の間で確執が生まれます。
そうした背景の中、敏達天皇は排仏を訴え神道を尊んだ「神道派の天皇」だったとされています。
橘氏とは?
橘氏(たちばなうじ)とは「橘」を氏の名とする氏族であり、飛鳥時代末期、県犬養三千代(あがたのいぬかいのみちよ)が元明天皇から「橘宿禰(たちばなのすくね)」の氏姓を賜ったことに始まるとされています。
つまり、県犬養三千代が橘氏の祖とされますが、この人物は敏達天皇の後裔に当たる美奴王(みぬおう)の妻であり、後に離別して藤原不比等の後妻となった際に「橘」という姓を賜ったそうです。
上記が定説ですが、この説に則って考えると橘氏と敏達天皇は無関係と思われます。
しかし、敏達天皇の祖母は橘仲皇女(たちばなのなかつひめみこ)であり、また敏達天皇の後裔に当たり聖徳太子の妃となった橘大郎女(たちばなのおおいらつめ)の名前にも「橘」が含まれています。
そのほか、敏達天皇の異母弟に当たる聖徳太子の父の用明天皇は「橘豊日天皇(たちばなのとよひのすめらみこと)」という名を持っており、また聖徳太子の生誕地とされる橘寺にも「橘」が含まれます。
これらのことから「橘氏」とは、敏達天皇および その祖先に関わる血統であり、聖徳太子にも深く関わる要素であったと考えられます。
そのため、橘氏の祖神を祀る全国唯一の神社とされるにも関わらず、橘氏の祖とされる県犬養三千代ではなく敏達天皇が祀られるのは、こうした背景に基づく血統を表しているのではないでしょうか?
ちなみに『記紀』において初めて「橘」の名のつく人物は、ヤマトタケルの妻の弟橘媛(おとたちばなひめ)であるとされています。
境内社
稲荷神社
五條宮の稲荷神社(いなりじんしゃ)です。
祭神
・乗光大明神
・八王子大明神
・福永大明神
・乗光大明神
・八王子大明神
・福永大明神
七神合堂
五條宮の七神合堂(しちしんごうどう)です。
祭神
・猿田彦神社:みちひらきの神・サルタヒコを祀る
・市杵島神社:宗像三女神の一柱・イチキシマヒメ(弁天さん)を祀る
・天満宮:菅原道真公(天神さん)を祀る
・天照皇大神宮:アマテラスを祀る
・八幡大神宮:八幡大神(応神天皇、神功皇后、比売神)を祀る
・阿遅鋤高彦根神社:アヂスキタカヒコネ(賀茂大御神)を祀る
・宇賀御魂神社:ウカノミタマ(稲荷神)を祀る
・猿田彦神社:みちひらきの神・サルタヒコを祀る
・市杵島神社:宗像三女神の一柱・イチキシマヒメ(弁天さん)を祀る
・天満宮:菅原道真公(天神さん)を祀る
・天照皇大神宮:アマテラスを祀る
・八幡大神宮:八幡大神(応神天皇、神功皇后、比売神)を祀る
・阿遅鋤高彦根神社:アヂスキタカヒコネ(賀茂大御神)を祀る
・宇賀御魂神社:ウカノミタマ(稲荷神)を祀る
光明竜王祠(こうみょうりゅうおうほこら)
五條宮の光明竜王祠です。
詳しい祭神はわかりませんでした。
境内の見どころ
鳥居
五條宮の鳥居です。
珍しくもシルバーに輝く金属製の鳥居であり、高級感があります。
神紋
五條宮の神紋は、皇室のシンボルである菊家紋章の中心に半円が重なったシンボルが刻まれています。
天皇を祀ることから この紋が使われているものと思われますが、中心のシンボルについてはわかりません。
拝殿
五條宮の拝殿です。
旧毘沙門池紀念碑
五條宮の旧毘沙門池紀念碑です。
これは、かつて此の地に「毘沙門池(びしゃもんいけ)」という池があったことを記念する碑とされています。
ちなみに四天王寺周辺には「毘沙門」の名に因む場所が点在しています(四天王寺、大江神社など)。
御神木
五條宮の神木・公孫樹(いちょう)です。
この御神木は樹齢500年の銀杏の樹であり、火難除・延命長寿の守護として信仰されているそうです。
喜美木
五條宮の入口付近(鳥居の外)には鳥居の設置された古木があります。
鳥居には「喜美木」と書かれ、酒などの供物が備えられています。
具体的な説明はありませんが、古木を御神体とする自然信仰(古神道)の名残でしょうか?
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「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。
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