木嶋坐天照御魂神社(木嶋神社・蚕の社) [京都府]
2015/08/16
京都市右京区太秦にある木嶋坐天照御魂神社(このしまにますあまてるみたまじんじゃ)です。
飛鳥時代末期には既に存在していたとされる古社とされており、通称 木嶋神社(このしまじんじゃ)もしくは蚕の社(かいこのやしろ)と呼ばれています。
また、境内には三本足が柱で繋がっている三柱鳥居という珍しい鳥居があることでも有名です。
神社概要
由緒
由緒書によれば、創建年代は不詳とされるものの、六国史の一つである『続日本紀』の大宝元年(701年)4月3日の条に当社の名前が記載されていることから、この年以前から存在していた古社であると考えられているとされます。
また、社伝によれば「天之御中主神(アメノミナカヌシ)を主神として奉り、天神から地神に渉る御魂の総称を天照御魂神(あまてるみむすびのかみ、あまてるみたまのかみ)と称して奉る神社であり、広隆寺の創建と共に勧請された」と伝えられているそうです。
祭神
木嶋神社の祭神は以下の通りです。
主祭神
・天之御中主神外四柱:以下の五柱の神を指す(ただし、天照御魂神という説もある)
→ 天之御中主神(アメノミナカヌシ):天地開闢の後に初めて現れた神であるとされる
→ 大国魂神(オオクニタマ):元々宮中で祀られていた地神であり、崇神天皇の御代に大和神社に遷されたとされる
⇒ 『ホツマツタヱ』という文献によれば、クシヒコ(事代主神)の別名とされる
→ 穂々出見命(ホホデミ):瓊々杵尊の子神であり、海幸山幸の山幸彦に当たる
⇒ 瓊々杵尊の皇統を引き継いで、鵜茅葺不合命を儲けたとされる
→ 鵜茅葺不合命(ウガヤフキアエズ):穂々出見命の子であり、神日本磐余彦尊(神武天皇)の父に当たる
→ 瓊々杵尊(ニニギ):天忍穂耳命の子であり、現在の皇統の礎を築いた皇祖神とされる
・天之御中主神外四柱:以下の五柱の神を指す(ただし、天照御魂神という説もある)
→ 天之御中主神(アメノミナカヌシ):天地開闢の後に初めて現れた神であるとされる
→ 大国魂神(オオクニタマ):元々宮中で祀られていた地神であり、崇神天皇の御代に大和神社に遷されたとされる
⇒ 『ホツマツタヱ』という文献によれば、クシヒコ(事代主神)の別名とされる
→ 穂々出見命(ホホデミ):瓊々杵尊の子神であり、海幸山幸の山幸彦に当たる
⇒ 瓊々杵尊の皇統を引き継いで、鵜茅葺不合命を儲けたとされる
→ 鵜茅葺不合命(ウガヤフキアエズ):穂々出見命の子であり、神日本磐余彦尊(神武天皇)の父に当たる
→ 瓊々杵尊(ニニギ):天忍穂耳命の子であり、現在の皇統の礎を築いた皇祖神とされる
境内社
![]() |
| 蚕養神社(蚕の社) |
木嶋神社の境内社は以下の通りです。
・蚕養神社(こがいじんじゃ):保食神、蚕の神、木花咲耶姫命を祀る
→ 雄略天皇の御代に秦酒公が絹や綾を献上した功績から兎豆麻佐の姓を賜り、これに因んで太秦という地名となった
⇒ 推古天皇の御代に太秦の由来を踏襲する養蚕・織物・染色の祖神を勧請したことに始まるとされる
→ 木嶋神社の通称「蚕の社」は当社に由来するとされる
・顕名神社(あきなじんじゃ):三井高安(三井家遠祖)を祀る
・稲荷神社
・稜道神社
・魂鎮神社
・三園稲荷神社
・八坂神社
・食国神社
・天満神社
・三拾八所神社
・白清神社
・白徳神社
・橋姫神社
・椿丘神社
→ 雄略天皇の御代に秦酒公が絹や綾を献上した功績から兎豆麻佐の姓を賜り、これに因んで太秦という地名となった
⇒ 推古天皇の御代に太秦の由来を踏襲する養蚕・織物・染色の祖神を勧請したことに始まるとされる
→ 木嶋神社の通称「蚕の社」は当社に由来するとされる
・顕名神社(あきなじんじゃ):三井高安(三井家遠祖)を祀る
・稲荷神社
・稜道神社
・魂鎮神社
・三園稲荷神社
・八坂神社
・食国神社
・天満神社
・三拾八所神社
・白清神社
・白徳神社
・橋姫神社
・椿丘神社
関連知識
太秦について
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| 秦酒公 |
『日本書紀』によれば、太秦(うずまさ)という地名は第21代 雄略天皇の御代に秦酒公(はたのさけのきみ)が、当時の税の一つであった絹や綾を うず高く積み上げて献上したため、天皇より兎豆麻佐(うづまさ)の姓を賜ったとされ、その姓に因んで当地を「太秦」と称したとされます。
ちなみに、大阪府寝屋川市にも太秦(太秦元町)という地名があり、秦氏に縁の深い土地であったとされています。また、秦町・川勝町など秦氏関連の地名もあり、聖徳太子の側近であった秦河勝の墓と伝えられている五輪塔も安置されています。
祭神の諸説
木嶋神社の祭神については諸説あり、以下のような説が挙げられています。
・社伝では天之御中主神および天照御魂神を主神として奉るとされる
→ 天照御魂神については天火明命説・天照大神説・天日神命説などがある
→ 『ホツマツタヱ』という文献には、天照大御神に当たる男神・アマテルが登場する
・『延喜式』神名帳における祭神の記載は1座とされる
・『葛野郡神社明細帳』には現在の五柱の祭神が記載される
→ 天照御魂神については天火明命説・天照大神説・天日神命説などがある
→ 『ホツマツタヱ』という文献には、天照大御神に当たる男神・アマテルが登場する
・『延喜式』神名帳における祭神の記載は1座とされる
・『葛野郡神社明細帳』には現在の五柱の祭神が記載される
天照御魂神=天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊 説
木嶋坐天照御魂神社は、そもそも「木嶋に鎮座する天照御魂神の社」という意味であり、本来は「天照御魂神」という神を祀る神社ということを指すとされます。
この「天照御魂神」がどの神を指すのかについては諸説ありますが、『新耳袋』の著者であり、古代史研究家としても知られる中山市朗氏の研究によると、「天照御魂神」とは「天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(あまてる くにてる ひこ あめのほあかり くしたま にぎはやひ の みこと)」のことであるとしています。
非常に長い名前の神様ですが、この神は『日本神話』の神武東征において、初代天皇である神武天皇と対峙した饒速日尊(ニギハヤヒ)のことを指すとされ、この神が木嶋神社の本当の祭神として祀られている由縁は「太秦の牛祭」および「秦河勝」と「聖徳太子」の謎に深くかかわっているのだそうです。
詳しくは、下記のビデオをご覧ください。
境内の見どころ
鳥居
木嶋神社の鳥居です。
手水舎
木嶋神社の手水舎です。
「かいこのやしろ」と刻まれ、付近に方角を示す石が置かれています。
舞台
木嶋神社の舞台です。
本殿
木嶋神社の本殿です。
元糺の池
木嶋神社の元糺の池(もとただすのいけ)です。
由緒書によれば、「境内に『元糺の池』と称する神池がある。嵯峨天皇の御代に下鴨に遷してより『元糺』と云う」とあります。ここにある「下鴨に遷して」とは、下鴨神社にある「糺の森」を指すと思われます(よって「元・糺」とされているようです)。
また、「糺(ただす)」とは、「正しくなす」 「誤をなおす」の意味で、この神池は身滌(みそぎ、身に罪や穢れのある時に心身を清める)をするための場所であるとされています。そのためか、この神池は夏期第一の「土用の丑」の日に手足を浸けると諸病に罹らないという言い伝えがあるそうです。
なお、京都三大奇祭の一つである「太秦の牛祭」の主役を務める摩多羅神役と四天王役の地元民は、祭りの前に木嶋神社の元糺の池で禊をし、一週間の肉断ち、酒断ちをしてから祭に臨むこととされているようです(なお、牛祭は付近にある広隆寺および大酒神社の祭事です)。
三柱鳥居
木嶋神社の三柱鳥居(みはしらとりい)です。
三本の足が柱で繋がっている珍しい形の鳥居であり、上から見ると三角形になっています。
由緒書によれば、この鳥居は「全国唯一の鳥居である。鳥居を三つ組み合わせた形体で、中央の組石は本殿の御祭神の神座であり、宇宙の中心を表し、四方より拝することができるよう建立されている。創立年は不詳であるが、現在の鳥居は享保年間(江戸中期)に修復されたものである。」とされています。
要約すると、「この鳥居は宇宙の中心を表し、その中心に積まれた石に神が降りて来る。鳥居の中心に居る神を四方から拝めるような構造になっている。」ということです。
なお、この鳥居は一説には景教(キリスト教のネストリウス派)の遺物ではないかと云われているとも書かれています。
キリスト教のネストリウス派とは、キリスト教の教義である三位一体(父・子〔キリスト〕・聖霊が一体であり、唯一の神であるという教え)に反し、父・子(キリスト)・聖霊をそれぞれ独立した存在と捉え、キリストを生んだ「マリア」が神の母であること否定している教派です。そのため、教会より異端認定され、追放されています。
三柱鳥居は、そのネストリウス派の教義を表現したのではないかとされているため、ネストリウス派の遺物という説が唱えられていると思われますが、『古事記』において、宇宙が誕生して最初に現れた神は三体であるとされており、それらの神は「造化の三神(ぞうかのさんしん)」と呼ばれています。
ちなみに、由緒書では「全国唯一の鳥居」とされていますが、実は「京都・奈良・岐阜・東京」の四ヶ所で その存在が確認されています。
その他
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境内には、妙な「井戸」と「六角形の石」があります。
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「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。
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