人文研究見聞録:四国八十八ヶ所77番札所 桑多山道隆寺 [香川県]

香川県多度津町にある道隆寺(どうりゅうじ)です。

四国八十八箇所霊場の第七十七番札所であり、本尊に薬師如来を祀る真言宗醍醐派大本山の寺院となっています。

境内には約270体の観音像が配され、生死の境を生に戻すとされる「もどり観音」という観音も祀っています。

なお、境内には鎮守社として妙見宮が鎮座しています。


寺院概要

縁起

寺伝によれば、奈良時代の和銅5年(712年)、当地の領主である和気道隆が桑の大木を切って小さな薬師如来像を彫造し、草堂を建てて寺としたことに始まるとされています。

なお、創建に因む伝承では「桑の大木が夜な夜な妖しい光を放っているのを見つけた道隆が、これを怪しんで矢を射ると、女の悲鳴が聞こえ、そこへ行ってみると乳母が倒れて死んでいた。これを嘆き悲しんだ道隆は桑の木で仏像を彫り、草堂に安置して供養すると、不思議にも乳母が生き返った」とされています。

また、大同2年(807)に道隆の子・朝祐が、唐から帰朝した弘法大師に懇願して90センチほどの薬師如来像を彫造してもらい、その胎内に父・道隆の像を納めて本尊としたとされます。

その後、朝祐は大師から授戒を受けて第2世住職となり、先祖伝来の財産を寺の造営にあてて七堂伽藍を建立し、寺名を父の名に因んで「道隆寺」と改名したとされています。

本尊

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・薬師如来(やくしにょらい):東方の浄瑠璃世界の主で、12の誓願を起こし、生ある全てのものを救う仏
 → 真言:オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ
 → 本地垂迹説において、スサノオの本地とされた

妙見宮

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道隆寺の鎮守社である妙見宮(みょうけんぐう)です。

元々は北極星を神格化した妙見菩薩(妙見尊星皇とも)を祀る「妙見信仰」に基づく神社とされています。

しかし、明治期の神仏分離令により、現在は天之御中主神(アメノミナカヌシ)を主祭神としているそうです。

なお、妙見宮の縁起は以下の通りです。

創建年代は不詳ですが、道隆寺の創建縁起にある「道隆の乳母に関わる奇事(由緒参照)」を妙見の化現であると察し、道隆寺の境内に妙見を祀る神祠を建立して伽藍の鎮守としたことに始まるとされています。

なお、妙見は妙見菩薩(みょうけんぼさつ)または妙見尊星皇(みょうけんそんしようおう)ともいい、神格化された北極星の本地(本来の姿)であるとされています。また、菩薩とされるものの天部(仏教における神)に属し、天台宗においては吉祥天と同体とされているそうです。

ちなみに、三豊市の妙見山には、巨大な磐座の下に鎮座する岩屋妙見宮があるそうです。

境内の見どころ

山門(仁王門)

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外側(仁王)
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内側(大わらじ)

道隆寺の山門です。

外側には仁王像を配し、内側には大わらじを飾っています。

なお、仁王像は黒目になっているのが特徴的です。

人文研究見聞録:四国八十八ヶ所77番札所 桑多山道隆寺 [香川県]
仁王像

本堂

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道隆寺の本堂です。

本尊に薬師如来を祀っています。

大師堂

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道隆寺の大師堂です。

本尊の大師像を拝顔することができます。

多宝塔

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道隆寺の多宝塔です。

潜徳院殿堂(目なおし観音)

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道隆寺の潜徳院殿堂(せんとくいんでんどう)です。

堂内には眼病平癒に霊験あらたかとされる目なおし観音が祀られています。

加茂稲荷大明神

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道隆寺の加茂稲荷大明神です。

もどり観音

人文研究見聞録:四国八十八ヶ所77番札所 桑多山道隆寺 [香川県]

道隆寺のもどり観音です。

この観音は生死の境を生へと戻すとされており、以下の様な謂れがあるそうです。

福岡市に住む「もどり観音」の元堂守が、観音の堂守時代に病に倒れ、病院で死亡して霊安室に運ばれた。

本人曰く、死後は苦しみが取れて爽やかな気分になり、深い海の底へ向かって行ったという。そこには3体の観音がおり、近づくと三匹の白蛇が体に巻き付いて上の方に運ばれていった。すると、近親者の声が聞こえて、気付くと数時間ぶりに蘇っていたという。

そのため、死後に見た観音の姿を自ら刻んで堂内に安置し、「もどり観音」と称して現在に至る(元々祀られていた観音像は、昭和20年代に突如として消えてしまったという)。

なで寿老人

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道隆寺のなで寿老人です。

撫でると健康長寿を授けてくれるとされています。

料金: 無料
住所: 香川県仲多度郡多度津町北鴨一丁目3番30号(マップ
営業: 7:00~17:00
交通: 多度津駅(徒歩12分)

公式サイト: http://www.88shikokuhenro.jp/kagawa/77doryuji/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。