人文研究見聞録:金前寺 [福井県]

福井県敦賀市にある金前寺(こんぜんじ)です。

敦賀港付近に位置する奈良時代創建の古刹であり、本尊に十一面観世音菩薩を祀っています。

なお、この本尊は『今昔物語集』にも登場する縁結びの袴掛観音としても知られているそうです。


寺院概要

縁起


由緒書によれば、天平6年(736年)に聖武天皇の勅命によって泰澄大師が十一面観世音菩薩座像を刻み、寺を建立して本尊として祀ったことに始まるとされます。

なお、天皇から下賜された金光明経を金櫃に納めて山に埋めたことにちなんで金ヶ崎山・金前寺と名付けられた、もしくは、寺伝で十一面観音が金光を発することから金前寺と名付けたとも言われています。

また、古くは氣比神宮の奥の院として一帯に伽藍十二坊を有するほど荘厳であり、平安時代の弘仁2年(811年)には弘法大師(空海)が訪れたという記録もあるそうです。

中世の南北朝時代には延元元年~2年(1336~1337年)にわたる金ヶ崎の戦いの本宮となり、南朝方の新田義貞が後醍醐天皇の皇子・恒良親王と尊良親王を奉じて北朝方と戦い、敗走した新田義顕は当山の観音堂にて尊良親王と共に自害したとされます。

また、戦国時代にも再び兵乱の舞台となり、織田信長の天筒山攻めの兵火によって堂宇を全焼したものの、本尊の十一面観世音菩薩像は焼失を免れたそうです。

その後、江戸時代の寛文2年(1662年)に打宅宗貞らが現在地に観音堂を再建し、元禄12年(1689年)に俳聖・松尾芭蕉が来遊して「月いづこ 鐘は沈る 海の底」と詠み、宝暦11年(1761年)に鐘塚を建立したとされます。

近代以降は、昭和20年(1945年)7月12日の敦賀空襲によって一切を焼失したものの、昭和63年(1988年)に信徒の浄財によって本堂を再建して現在に至るとされています。

本尊


・十一面観音(じゅういちめんかんのん):観音菩薩の変化身の1つであり、六観音の1つとされる(袴掛観音とも)

関連知識

袴掛観音


当寺の本尊は、袴掛観音(はかまかけかんのん)とも呼ばれ、『今昔物語集』には以下のような由来が記されています。

昔、越前国の敦賀という所に父母と娘一人で住む家族がいた。父母は娘に夫を持たせようとするも上手くいかなかったため、家の後ろに堂を建てて、観音像を安置して娘の幸せを祈った。

この後、父が亡くなり、間もなく母も亡くなってしまい、残された娘は困窮していった。困った娘が観音像に救いを求めて祈っていると、娘の夢の中に老僧が現れて「明日 夫となる者が現れるだろう」と告げたので、観音様が救ってくださったのだと思って、水浴びをして観音像に礼拝した。

娘が言われた通りに待っていると、その日の夕方に多くの従者を引き連れた一行が「宿を貸してほしい」と訪ねてきたので、お告げに従って家に招き入れることにした。

その一行の主である男は、美濃国の豪族の一人息子で最愛の妻を亡くしており、再婚話が来ても「生きていた頃の妻のような女が良い」と断っていたが、娘を見るやいなや亡き妻にそっくりだと思って驚いたという。しかし、若狭国に用事があって来ていたため、翌日、従者を残して旅立っていった。

残された娘は、従者達に食事をもてなすこともできずに困っていると、昔 父母に仕えていた者の娘であると名乗る女が現れて、食事の用意などを手伝ってくれた。その後、男が若狭国から戻ってくると、娘を美濃国に連れ帰ると言うので、娘は色々と助けてくれた女にお礼として紅い袴を与えた。

その翌日、娘は敦賀を発つ前に観音像に礼拝すると、昨晩 女に与えた紅い袴が像の肩にかかっていたので、娘は観音様が女に変化して助けてくれたことに気付き、涙を流して感謝した。その後、娘と男は美濃国で夫婦となり、子供を儲けて幸せに暮らし、常に敦賀にも通って観音様に詣でたという。

参考サイト:やたがらすナビ

境内の見どころ

本堂


人文研究見聞録:金前寺 [福井県]

金前寺の本堂です。

観喜天堂


人文研究見聞録:金前寺 [福井県]

金前寺の観喜天堂です。

絆堂


人文研究見聞録:金前寺 [福井県]

金前寺の絆堂です。

五重塔


人文研究見聞録:金前寺 [福井県]

金前寺の五重塔です。

梵鐘


人文研究見聞録:金前寺 [福井県]

金前寺の梵鐘です。

芭蕉の句碑


人文研究見聞録:金前寺 [福井県]

金前寺にある芭蕉の句碑です。

石に松尾芭蕉の詠んだ俳句が刻まれています。

仏像群


人文研究見聞録:金前寺 [福井県]

金前寺の仏像群です。

料金: 無料
住所: 福井県敦賀市金ケ崎町1-4(マップ
営業: 不明
交通: 敦賀駅(徒歩29分)、コミュニティバス「金ヶ崎宮」下車(徒歩5分)

公式サイト: http://www.konzenji.jp/index.html
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。