人文研究見聞録:鹿苑寺(金閣寺) [京都府]

京都市北区にある鹿苑寺(ろくおんじ)です。

足利義満の別邸・北山殿を前身とする禅寺であり、一般的には金閣寺(きんかくじ)として知られています。

また、銀閣(慈照寺)、飛雲閣(西本願寺)とあわせて「京の三閣」とも呼ばれており、世界遺産にも登録されています。


寺院概要

縁起


由緒書によれば、応永4年(1397年)に室町幕府3代将軍足利義満が西園寺(鎌倉時代に西園寺公経が創建した山荘)を譲り受け、これを御所に匹敵する規模の北山殿(きたやまどの)と呼ばれる別邸に造り替え、さらに義満の死後の応永29年(1422年)に夢窓疎石を開山とする禅寺となったことに始まるとされます。

なお、「鹿苑寺」という名は義満の法号である「鹿苑院殿」にちなんで名付けられており、仏舎利(釈迦の遺骨)を祀った舎利殿「金閣」が有名であることから「金閣寺」と通称されるようになったそうです。

その後、応仁の乱によって建物の多くが焼失したことから一旦衰微し、江戸時代になってから主要な建物が再建され、金閣や庭園などの大修理が行われたとされます。しかし、明治の廃仏毀釈によって寺領の多くが返上されてしまい、経済的基盤を失うことになりますが、明治27年(1894年)から金閣および庭園を一般公開すると共に拝観料を取るようになったことで寺収入を確保したそうです。

なお、金閣は明治30年(1897年)に特別保護建造物に指定され、昭和4年(1929年)に(旧)国宝の指定を受けたとされますが、昭和25年(1950年)に放火によって金閣および安置されていた仏像などが焼失してしまったため、国宝指定は解除され、昭和27年(1952年)から再建が始められて昭和30年(1955年)に竣工し、創建当時の姿に復元されたそうです。

その後、昭和61年(1986年)から翌年にかけて金閣の大修復が行われ、平成6年(1994年)に「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されています。

関連知識

金閣に見る足利義満の思想


人文研究見聞録:鹿苑寺(金閣寺) [京都府]

金閣は三層からなっており、一層目は「法水院」と呼ばれる寝殿造、二層目は「潮音洞」と呼ばれる武家造、三層目は「究竟頂」と呼ばれる禅宗仏殿造になっており、屋根の上には鳳凰が配されています。

この金閣を建てた足利義満は、征夷大将軍(武家のトップ)から太政大臣(公家のトップ)に転任しますが、それを辞めて出家し、さらに明(中国)の皇帝から「日本国王源道義」という封号を与えられて独自の外交を行っています。

こうした経歴から義満は公武を超越する権力を持つこととなり、やがては天皇になろうとしていたといわれていますが、一説に義満は太上法皇を目指していたともいわれています。

その根拠として、金閣の構造をユング心理学で紐解くと、金閣の最下層は寝殿造で公家を表し、二層目は武家造で武家を表し、三層目は仏殿造で僧侶を表し、その上に鳳凰が立っています。これは俗界を司る公家・武家の上に、俗界に縛られない僧侶がおり、さらにその上に僧侶を統べる法皇が君臨していることを意味するということです。

確かに義満の経歴を見てみれば、武家・公家のトップという地位を捨てて出家し、外国には日本国王と認めさせているので、次に狙うのは何者にも縛られない太上法皇という地位だったのかも知れません。

なお、この説は以下のリンクの動画の説を参考にしています(なかなか面白いので歴史好きな人にはオススメです)。

参考リンク:竹内睦泰 室町幕府の確立

境内の見どころ

総門


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金閣寺の総門です。

庫裡


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金閣寺の庫裡(くり)です。

唐門


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金閣寺の唐門です。

ここに拝観受付があります。

御札(拝観券)


人文研究見聞録:鹿苑寺(金閣寺) [京都府]

金閣寺の御札です。拝観券としてパンフレットと共に渡されます。

家に貼っておくと家内安全・開運招福の御利益があるそうです。

なお、境内には御札の回収箱がいくつか設置されています。

舎利殿(金閣)


人文研究見聞録:鹿苑寺(金閣寺) [京都府]

金閣寺の舎利殿(金閣)です。

下層から寝殿造・武家造・禅宗仏殿造の三層構造になっており、三層目には仏舎利(釈迦の遺骨)が祀られています。

鳳凰像


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金閣寺の鳳凰像です。

南側を向いた状態で設置されていますが、その理由は謎であり諸説唱えられています。

鏡湖池


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金閣寺の鏡湖池(きょうこち)です。

池上には葦原島・鶴島・亀島などの島々や、畠山石・赤松石・細川石などの奇岩が浮かんでいます。

また、池に反射して映る金閣は「逆さ金閣」と呼ばれているそうです。

方丈


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金閣寺の方丈です。

本尊として観音菩薩が祀られています。

榊雲


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金閣寺の榊雲(しんうん)です。

金閣寺の創建以前から祀られていたとされ、祭神は北山の山の神といわれているそうです。

銀河泉


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金閣寺の銀河泉(ぎんがせん)です。

この泉の湧水は、茶湯に使われていたといわれています。

厳下水


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金閣寺の厳下水(がんかすい)です。

この水は手洗いに使われていたといわれています。

龍門瀧


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金閣寺の龍門瀧(りゅうもんたき)です。

瀧から流れ落ちる水は、鯉魚石(りぎょせき)と呼ばれる石に当たっています。

安民沢


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金閣寺の安民沢(あんみんたく)です。

白蛇の塚


人文研究見聞録:鹿苑寺(金閣寺) [京都府]

金閣寺の白蛇の塚です。

西園寺家の旧跡で、その鎮守として造られた塚といわれています。

貴人榻


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金閣寺の貴人榻(きじんとう)です。

高貴な人が腰掛けた石であるといわれています。

不動堂


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金閣寺の不動堂です。

天正年間に宇喜多秀家が再建したといわれ、空海作といわれる石不動明王を祀っています。

荼枳尼天堂


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金閣寺の荼枳尼天堂です。

荼枳尼天(だきにてん)が祀られています。

料金: 一般400円、小中学生300円
住所: 京都府京都市北区金閣寺町1(マップ
営業: 9:00~17:00
交通: 北野白梅町駅(徒歩20分)、市バス「金閣寺道」

公式サイト: http://www.shokoku-ji.jp/k_access.html
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。