月夜見宮(豊受大神宮 別宮) [三重県]
2015/10/05
三重県伊勢市にある月夜見宮(つきよみのみや)です。
豊受大神宮(外宮)の別宮であり、主祭神に月夜見尊(つきよみのみこと)を祀っています。
神社概要
由緒
創建年代は不詳とされますが、古くは高河原(たかがわら)と呼ばれる農耕の神を祀る神社だったそうです。
なお、平安中期(927年)に外宮摂社となり、鎌倉初期(1210年)に別宮に昇格したとされています。
ちなみに、内宮の付近にも月讀宮という同神を祀る社がありますが、分けられた理由については不明です。
外宮、月讀宮についてはこちらを参照:【豊受大神宮(外宮)】、【月讀宮】
祭神
月夜見宮の祭神は以下の通りです。
主祭神
・月夜見尊(つきよみのみこと):月を象徴する三貴子の一柱(下記参照)
・月夜見尊荒御魂(つきよみのみことのあらみたま):月夜見尊の荒魂(荒ぶる魂)
月夜見尊(ツクヨミ)について
主祭神のツクヨミは、アマテラス、スサノオとともに三貴子の一柱に数えられる尊い神とされています。
なお、「月夜見尊」の表記は『日本書紀』の異伝である「第五段一書」に登場する神名であり、その説話の特徴として、食糧神である保食神(ウケモチ)を斬り殺しているということが挙げられます。その説話は以下の通りです。
ツクヨミとウケモチ
ある書によると、イザナギは三貴神のそれぞれに「天照大神(アマテラス)は高天原を治めよ、月夜見尊(ツクヨミ)は日と共に天を治めよ、素戔鳴尊(スサノオ)は海を治めよ」と命じました。
アマテラスは天上で「葦原中国には保食神(ウケモチ)がいると聞きます。ツクヨミよ、そこへ出向いて様子を伺って来なさい」と命じ、ツクヨミはそれを受けて地上に天降り、ウケモチのもとへと向いました。
ツクヨミが訪ねてくるとウケモチは首を回し、国の方を向いて飯を、海の方を向いてヒレの大きな魚、ヒレの小さな魚を、山の方を向いて毛の固い獣、毛の柔らかい獣を口から出しました。そして、口から出した品物を机に並べてツクヨミを持て成しました。
それを見たツクヨミは顔色を変えて怒り、「なんと汚く卑しいのだ、口から吐き出したものを食べさせようとするとは」と言い、すぐに剣を抜いてウケモチを斬り殺しました。
そして、ツクヨミは高天原に還り、その様子を報告しました。するとアマテラスは怒り、「お前は悪い神である、顔も見たくない」と言い、それ以降、昼と夜は別々になりました。
アマテラスは天界の料理人である天熊人(アメノクマヒト)を地上に降ろして様子を見に行かせました。すると、ウケモチはすでに死んでいましたが、ウケモチの髪が牛馬となり、頭からは粟(アワ)が生え、眉からは蚕(カイコ)が産まれていました。また、眼には稗(ヒエ)が生え、腹には稲が生え、女陰には麦、大豆、小豆が生えていました。
アメノクマヒトはそれらを全て持ち帰るとアマテラスはとても喜び、「これらのものは、地上に生まれた人民を生かすための食料となる」と言いました。それで、粟・稗・麦・豆は畑の種子とし、稲を水田の種子としました。
そして、アメノクマヒトを天邑君(村長)に定め、稲の種子を天狭田(アマノサナダ)に初めて植えると、秋には沢山に実った穂が垂れ下がるほどになっており、その様子はとても見事でした。また、口に蚕を含んで糸を引くことができたので、養蚕の道が開けました。
※読みやすいように加筆修正していますので、原文とは表現が異なる点があります。
この説話が、ツクヨミの性格を知る上で唯一の手掛かりとなる具体的なものであり、これ以降、ツクヨミが語られることはほとんどありません。
なお、これと関連する説話が『山代国風土記』にあり、それによれば「ツクヨミが湯津桂の樹に憑りついた」ことから京都の「桂」の地名の由来になったとされています。
また、パンフレットによれば、天照大御神(アマテラス)の弟神に当たり、皇大神宮(内宮)の別宮である月讀宮の祭神・月讀尊(ツクヨミ)と同神とされ、ツクヨミはその光彩(ひかりうるわしいこと)がアマテラスに亜(つ)ぐものであると讃えられることから、アマテラスが太陽に喩えられることに対し、ツクヨミは月に喩えられる神であると説明されています。
境内社
高河原神社
月夜見宮の境内摂社・高河原神社(たかがわらじんじゃ)です。
外宮の祭儀を記録した『止由気宮儀式帳』に記載があることから、平安期以前には存在していたとされています。
なお、高河原神社の祭神は以下の通りです。
高河原神社の祭神
・月夜見尊御魂(つきよみのみことのみたま):月夜見尊の御魂
→ 倉稲魂命(ウカノミタマ)という説もある
境内の見どころ
鳥居
月夜見宮の鳥居です。
参道の入り口となっています。
境内の様子
月夜見宮の境内の様子です。
非常に美しい景観であり、参拝した時には心地よい風が吹いていました。
本殿
月夜見宮の本殿です。
祭神に月夜見尊とその荒魂が祀られています。
大楠の古木
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月夜見宮に祀られている大楠の古木です。
由緒などは不明ですが、大楠の前には鳥居が建てられ、狐像と賽銭箱が配されています。
また、大楠の中央には磐座(いわくら)が祀られ、榊(さかき)も供えられています。
磐座形式で丁重に祀られていることから、古くから存在していた神社であると考えられます。
また、狐像から祭神は稲荷神であるとも考えられ、以前から存在したとされる農耕の神を祀っているとも取れます。
なお、上記に示したウケモチは『ホツマツタヱ』という古史古伝によれば稲荷神の一とされます。
よって、神話と照らし合わせてウケモチを祀っているとも考えられますね(個人的な推論です)。
料金: 無料
住所: 三重県伊勢市宮後1-3-1006(マップ)
営業: 終日開放(夜間参拝禁止、18:00頃まで)
交通: 伊勢市駅(徒歩5分)
公式サイト: http://www.isejingu.or.jp/geku_4.html
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「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。
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