人文研究見聞録:素戔嗚神社(素佐男神社、祇園さん) [奈良県]

奈良県桜井市三輪にある素戔嗚神社(すさのおじんじゃ)です。

祭神に素戔嗚尊(スサノオ)を祀っている神社であり、「素佐男神社」とも表記し「祇園さん」とも呼ばれています。


神社概要

由緒

案内板によれば、当社は祇園信仰に基づいて素戔嗚尊(スサノオ)を祀る社であり、創建年代は不詳なものの「ぎおんさん」という呼称で古くから当地に祀られていたとされます。

なお、案内板による説明は以下の通りです。

【案内板 その1】

素佐男神社(祇園さん)

御祭神・素戔嗚尊(すさのおのみこと)は天照大神(あまてらすおおみかみ)の弟神で大国主神(おおくにぬしのかみ、大黒さん)の親神様です。

人間生活万般にわたる全てのものを生かし、育て、とりわけ勇気を与えて下さる神様です。後世、悪疫退散の神様(祇園信仰)として、広く知られています。

わが国の文化発祥の この地に最も古くより厚く信仰されてきた お社です。

【案内板 その2】

素盞鳴神社

当社は三輪明神の御祭神・大国主命の親神様である素佐男命(スサノオ)をお祀りしています。

元気、勇気、優しさの神「ぎおんさん」という呼び名で親しまれ、老欅(ろうきょ)の森の中に悠久の昔から、ここに祀られています。

毎月7日が祭日で、1月、7月、10月には大祭が催され、1月の綱掛祭、7月のぎおんさんの夏祭は、特に賑わいます。

※祇園信仰(ぎおんしんこう):牛頭天王・スサノオに対する神仏習合の信仰で、京都の八坂神社もしくは兵庫県の広峯神社を総本社とする

祭神

素戔嗚神社の祭神は以下の通りです。

・素戔嗚尊(スサノオ):三貴子の一柱であり、出雲の祖神
 → 祇園信仰の牛頭天王(ゴズテンノウ)と習合し、悪疫退散の神として信仰される
 → 当社では元気、勇気、優しさの神で、「ぎおんさん」という名で親しまれているとされる

境内社

白山神社

人文研究見聞録:素戔嗚神社(素佐男神社、祇園さん) [奈良県]

素戔嗚神社の境内社白山神社(しらやまじんじゃ)です。

案内板によれば、当地域は古くから加賀白山の信仰が篤いとされ、祭神に白山大神を祀っているとされます。

また、祭礼は氏神社と併せて祭祀してるそうです。

【祭神】

・白山大神(しらやまおおかみ):白山信仰に基づいて、加賀の白山ほか全国の白山神社に祀られる神
 → 別名、菊理媛命(ククリヒメ、キクリヒメ)白山比咩神(シラヤマヒメ)とも呼ばれる
  ⇒ 菊理媛命は『日本書紀』の異伝に登場する神で、イザナギの黄泉国訪問の段に登場する
  ⇒ 白山比咩神は『記紀』には登場しない神名である
 → 『ホツマツタヱ』においては、シラヤマカミはカンミムスビとシラヤマヒメの夫婦神を指す
  ⇒ シラヤマヒメはイサナギの兄妹神で、アマテルの叔母に当たる(キクキリヒメ、ココリヒメとも呼ばれる)

庚申大権現・愛宕大権現・金毘羅大権現

人文研究見聞録:素戔嗚神社(素佐男神社、祇園さん) [奈良県]

素戔嗚神社に祀られる庚申(こうしん)・愛宕(あたご)・金比羅(こんぴら)大権現です。

白山神社の脇に祀られており、案内板によれば、これらの大権現は「歯定さん(はじょうさん)」と呼ばれ、歯痛に霊験があるとして信仰されているとされます。

【祭神】

・庚申大権現(こうしんだいごんげん):庚申信仰に基づく神仏習合の神
 → 庚申信仰:中国道教の三尸説を基に、仏教・密教・神道・修験道・民間信仰が習合した複合信仰
・愛宕大権現(あたごだいごんげん):愛宕山の山岳信仰と修験道が融合した信仰に基づく神仏習合の神
 → 信仰の種類はいくつかあるが、火伏の神として防火に霊験あらたかとされる例が多い
・金比羅大権現(こんぴらだいごんげん):諸説あるが、主に大物主神(オオモノヌシ)と習合する神仏習合の神
 → 讃岐の金刀比羅宮に基づくといわれる
  ⇒ 『ホツマツタヱ』によれば、金刀比羅宮の祭神は5代目大物主に当たるクシミカタマであると考えられる

境内の見どころ

薬師堂

人文研究見聞録:素戔嗚神社(素佐男神社、祇園さん) [奈良県]

素戔嗚神社にある薬師堂(やくしどう)です。

古くから十二神将に囲まれてお薬師様(薬師如来)が祀られていたとされています。

なお、案内板では以下のように説明されています。

【案内板 その1】

お薬師様

正面の お堂に、お薬師様が十二神将の守護神と共に、お祀りされています。

病気は、地・水・火・風の四大不調から起こるといわれ、三輪山信仰の三光宝珠(日・月・星と天・地・人の和合)の祈りと共に、この お薬師様は古くから ここに お座りになって、万民の健康を お守り下さっています。

【案内板 その2】

薬師堂

正面、南向きの御堂の中に、十二神将の御佛に囲まれて お薬師様が お座りになって、私たちの無事を見守ってくださっています。

毎月8日、村の有志の女性たちによって お祀りされ、1、4、7、10月の8日には、平等寺の和尚の招来を得て、私たち皆の安泰を祈念しています。

磐座

人文研究見聞録:素戔嗚神社(素佐男神社、祇園さん) [奈良県]

素戔嗚神社の境内には、磐境(いわさか)に囲まれた二つの磐座(いわくら)が安置されています。

これは大神神社と同様に、古神道(原始神道)磐座信仰(いわくらしんこう)という形式で祀られています。

なお、案内板では以下のように説明されています。

磐座の由来

座を(くら)と読んで磐座(いわくら)と申します。古代祭祀の形態を伝えている貴重な岩石であります。

古代に在って、その土地の人々が神を祭るのに、時に応じ一定の場所を定めて神域とし、自然の岩石を神の鎮まり坐(いま)す処として、そこに祭神を招き迎えて祭ったのが、磐座祭祀(いわくらさいし)であります。

その歴史は古く、その起源は神代の昔に遡ります。今もその伝統のままに祭られて居るのが、日本最古の神社と云われる大神神社であります。御神体の三輪山には、多数の磐座が存在しています。

料金: 無料
住所: 奈良県桜井市三輪305(マップ
営業: 終日開放
交通: 三輪駅(徒歩6分)

公式サイト: http://oomiwa.or.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。