佐美長神社 [三重県]
2015/10/08
三重県志摩市磯部町にある佐美長神社(さみながじんじゃ)です。
内宮の別宮である伊雑宮(いざわのみや)の所管社であり、祭神に大歳神(オオトシノカミ)を祀っています。
神社概要
由緒
創建については諸説ありますが、主に『倭姫命世記』にある「穂落伝承(御饌つ国、志摩)」に基づいて創始されたと云われています。
なお、その伝説の中で「真名鶴がくわえて飛んできてその稲を落とした」という説話もあることから、「穂落社」もしくは「穂落宮(ほおとしみや)」とも呼称されるそうです。
また、別説には「朝熊神社の大歳神を強引に佐美長神社に結び付けたもの」や地域を治めた磯部氏が稲作の神として創祀したもの」という説があるとされています。
なお、近世以前の古書では、ほとんどが「大歳神社」または「大歳宮」と記しているともされ、室町時代から江戸時代まで存在した神楽殿では、猿田彦大神を祀り、天下泰平と五穀豊穣を願って年間36回の神楽が奉納されていたそうです。
そのため、創祀の由来や祭神についての多くは謎であり、大歳神や猿田彦大神を祀っていることから、伊勢神宮の創祀よりも前から存在していた神社であるとも考えられます(個人的推論です)。
祭神
佐美長神社の祭神は以下の通りです。
主祭神
・大歳神(オオトシノカミ):穂落伝承(創建伝承)によれば、白真名鶴を指すとされる
→ いわゆる大歳神とは、ニュアンスが異なる印象を受ける(個人的見解)
→ 江戸時代まで存在した神楽殿では猿田彦大神を祀っていたとも
・大歳神(オオトシノカミ):穂落伝承(創建伝承)によれば、白真名鶴を指すとされる
→ いわゆる大歳神とは、ニュアンスが異なる印象を受ける(個人的見解)
→ 江戸時代まで存在した神楽殿では猿田彦大神を祀っていたとも
穂落伝承
「穂落伝承(ほおとしでんしょう)」は佐美長神社の創建伝承であり、『倭姫命世記』の中に記されています。
穂落伝承
垂仁天皇27年9月、倭姫命(ヤマトヒメ)一行が志摩国を巡幸中、一羽の鳥が昼夜問わずしきりに鳴いているところに遭遇した。倭姫命は「只事ではない」と言い、大幡主命と舎人紀麻良を遣わしてその鳥の様子を見に行かせた。
すると、そこには稲が豊かに実る水田があり、白真名鶴(しろまなづる)が稲を咥えて廻り、植えては鳴き、植えては鳴きを繰り返していた(「くわえて飛んできてその稲を落とした」とも)。
倭姫命は「物言わぬ鳥すら田を作り、天照大神(アマテラス)に奉る」と感激し、伊佐波登美神に命じて抜穂(ぬいぼ)に抜かせ、天照大神に奉った。
そして、その稲の生育していた田を「千田」(ちだ)と名付け、その傍らに神社を建立した。これが伊雑宮(いざわのみや)であり、稲を咥えていた白真名鶴を「大歳神(オオトシノカミ)」として祀ったのが佐美長神社である。
垂仁天皇27年9月、倭姫命(ヤマトヒメ)一行が志摩国を巡幸中、一羽の鳥が昼夜問わずしきりに鳴いているところに遭遇した。倭姫命は「只事ではない」と言い、大幡主命と舎人紀麻良を遣わしてその鳥の様子を見に行かせた。
すると、そこには稲が豊かに実る水田があり、白真名鶴(しろまなづる)が稲を咥えて廻り、植えては鳴き、植えては鳴きを繰り返していた(「くわえて飛んできてその稲を落とした」とも)。
倭姫命は「物言わぬ鳥すら田を作り、天照大神(アマテラス)に奉る」と感激し、伊佐波登美神に命じて抜穂(ぬいぼ)に抜かせ、天照大神に奉った。
そして、その稲の生育していた田を「千田」(ちだ)と名付け、その傍らに神社を建立した。これが伊雑宮(いざわのみや)であり、稲を咥えていた白真名鶴を「大歳神(オオトシノカミ)」として祀ったのが佐美長神社である。
大歳神について
佐美長神社の祭神は、大歳神(オオトシノカミ)という五穀豊穣の神とされています。
当社にまつわるの「穂落伝承」においては「真名鶴」が大歳神であるとされ、内宮の摂社である朝熊神社(あさくまじんじゃ)の祭神(大歳神を祀る)と同じであるとしています。
なお、「大歳神」の名の由来は「穂落(ほおとし)が大歳(おおとし)に変わった」とする説や「鶴が長寿を象徴することから、多き年が転じて大歳になった」とする説があるそうです。
『古事記』における大歳神は、スサノオとカムオオイチヒメの子とされ、稲荷神として知られるウカノミタマの兄神に当たります。
ウカノミタマと同様に豊穣を司る神とされ、一説によれば奈良県の三輪山に鎮座する神(オオクニヌシに祀られた神)であるという説もあります(説話に神名は登場しないものの、系譜がやたら詳しく記される神です。一説にはニギハヤヒであるとも言われています)。
そのほか、「伊佐波登美神またはその子とする説」や「穀物の神とする説」があり、『宇治山田市史』においては「佐美長神社を『延喜式』にある同島坐神乎多乃御子神社に比定し、その神社の祭神である神乎多乃御子神(カムオダノミコノカミ)を祀っている」としています。
なお「神乎多乃御子神」とは、粟島(志摩)の神の子であり、水田の守護神と考えられているそうです。
境内の見どころ
鳥居
佐美長神社の入口の鳥居です。
祓所
佐美長神社の境内には、四方に注連縄が張られた一角があります。
これは恐らく、祓所に相当する場所であると思われます。
本殿
佐美長神社の本殿です。木造で非常に美しい社殿となっています。
なお、境内からは縄文時代から古墳時代の遺物が出土し、供献用と見られる土器類が発見されているそうです。
磐座
佐美長神社の本殿の横には磐座が祀られています。
式年遷宮の古殿地(古い社殿があった場所)かもしれません。
佐美長御前神社
佐美長神社の境内にある佐美長御前神社(さみながみまえじんじゃ)です。
伊雑宮の所管社であり、古地図では「地主神五社」、『志陽略誌』では「月読宮・熊野遥拝社・子易ノ社」とされます。
祭神は佐美長御前神(さみながみまえのかみ)とされますが、別説では伊佐波登美神の子孫の霊とされるようです。
しかし、その他の古書では「祭神不明」とも記されているとされています。
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「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。
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