人文研究見聞録:高野山・奥の院 [和歌山県]

和歌山県伊都郡高野町にある高野山の奥の院(おくのいん)です。

空海の入定する弘法大師御廟があることから高野山の信仰の中心地とされ、壇場伽藍と共に高野山の二大聖地の一つとされています。そのため、御廟橋の先は聖域とされ、写真撮影はおろか、飲食や喫煙も一切禁止という厳しい規制が敷かれています。

なお、区画としては高野山の東方にある一の橋から奥院・弘法大師御廟までの一帯を指し、一の橋から御廟橋までは約2kmにわたる参道となっています。その参道沿いには無数の石塔や石仏などが立ち並び、そのほか松尾芭蕉や高浜虚子の句碑なども安置されています。

ちなみに、参道沿いに並ぶ石塔の数は、10万基とも20万基とも言われているそうです。

高野山についてはこちらの記事を参照:【高野山】


概要

高野山と空海(空海は今でも生きている?)

人文研究見聞録:高野山・奥の院 [和歌山県]

真言密教における入定(にゅうじょう)とは、僧が衆生救済を目的とし、弥勒出世の時まで禅定(生死の境を越えた宗教的な深い瞑想)に入るという究極的な修行を指し、後にその肉体が即身仏(いわゆるミイラ)となって現れるとされています。

高野山における空海はこの「入定」を行っているとされているため、今でも禅定を続けていると解釈されており、空海入定後から現在までの1200年もの間、1日2回の食事と衣服を給仕しているんだそうです。

空海(弘法大師)についてはこちらの記事を参照:【空海(弘法大師)とは?】

奥の院の見どころ

一の橋

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奥の院の一の橋です。

ここが弘法大師御廟までの参道入口となっています。

景教碑

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奥の院にある景教碑(けいきょうひ)です。一の橋から入って二股に分かれる右の道を進むとあります。

これは中国で発掘された「大秦景教流行中国碑」という景教(ネストリウス派キリスト教)の教義や中国への伝来などを刻す古碑のレプリカであり、E.A.ゴルドン夫人という女性よって建てられたものとされています。

この女性は「キリスト教と仏教の根本同一」というテーマで研究を行っており、中国・朝鮮を調査を経て明治末期には日本を訪れ、その研究結果の中で「弘法大師と景教との関係」という著書を残しているんだそうです。

なお、碑文の内容については、Wikiソースで原文が公開されています(漢文)。

また、石碑自体は贔屓(ひいき)という龍の一種の背に碑文が立てられた形であり、碑文の上部には「景教の十字架」が刻まれ、裏側には「三角形に卍」が刻まれています。

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贔屓
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景教の十字架
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三角形に卍

戦国武将の墓所

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武田信玄供養塔
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織田信長供養塔
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豊臣家墓所

奥の院の参道には数多くの戦国武将の墓所や供養塔が立ち並んでいます。

その内訳は、織田信長や豊臣家をはじめとする有名武将から、比較的知名度の低い武将まで様々です。

そのため、地元ゆかりの戦国武将の墓所を探してみるのも面白いと思います。

企業・団体の慰霊碑

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人文研究見聞録:高野山・奥の院 [和歌山県]

奥の院の参道には数多くの企業・団体の慰霊碑が立ち並んでいます。

その多くは企業のコンセプトにまつわるユニークなオブジェが飾られており、なかなか珍しい光景が拝めます。

石仏群

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奥の院の参道には数多くの石仏が立ち並んでいます。

その種類は様々であり、空海(弘法大師)の像をはじめ、化粧を施された地蔵なども存在します。

大師の腰かけ石

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奥の院にある大師の腰かけ石です。

六角形の枠の中央に置かれた石を指し、空海が腰を掛けて休憩したという言い伝えがあるそうです。

なお、昔は「息処石」と書いて「腰かけ石」と詠んだとされています。

汗かき地蔵

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奥の院にある汗かき地蔵です。

この地蔵は人々の犯した罪を代わって受けているために、汗を流していると云われているそうです。

姿見の井戸

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奥の院にある姿見の井戸です。

この井戸を覗き込んで自分の影が映らなければ、3年以内に亡くなるという言い伝えがあるとされています。

英霊殿

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奥の院にある英霊殿です。

第二次世界大戦の戦死者供養のために建てられた建物とされています。

御供所

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奥の院にある御供所(ごくしょ)です。

ここでは御廟にいる空海のための食事が調理され、ここから届けられるとされています。

護摩堂

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奥の院にある護摩堂です。

ここでは護摩祈祷などが行われています。

水向地蔵

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奥の院にある水向地蔵(みずむけじぞう)です。

経木を奉納し、水を手向けて先祖の供養をする地蔵群とされています。

なお、地蔵尊の他にも観音菩薩や不動明王などの仏像も立ち並んでいます。

御廟橋

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奥の院にある御廟橋(ごびょうばし)です。

この先には弘法大師御廟があるため、橋から御廟側は聖域とされています。

そのため、御廟橋から撮影禁止エリアとなっており、食事や喫煙も御法度とされています。

なお、御廟前では お遍路のように納経を行うのが一般的とされており、お遍路用の納経帳には朱印を受ける頁もあります。

料金: 無料
住所: 和歌山県伊都郡高野町高野山(マップ
営業: 8:30~17:30
交通: 高野山駅ほか、南海りんかんバス「奥の院口(一の橋)」もしくは「奥の院前(中の橋)」下車

公式サイト: http://www.koyasan.or.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。