『古語拾遺』による日本神話(まとめ)
2016/05/07
『古語拾遺(こごしゅうい)』とは平安時代の神道資料とされる書物であり、その内容には「日本神話」と呼ばれる神代の歴史が記されています。
当サイトでは「日本神話の研究」をテーマの一つに挙げているため、此処に『古語拾遺』に含まれる「日本神話」の内容を現代語訳にし、簡単にまとめて紹介しておきたいと思います(天皇の時代は省略します)。
【目 次】
前書
目的・留意点
はじめに、この記事に関する目的と留意点をまとめておきます。
・この記事は、『古語拾遺』に記される「日本神話」の内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・他書との比較のため、神名はカタカナで表記しており、また「~のみこと」「~のかみ」などの尊称を省略しています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです(複数ある場合は「、」で区切っています)
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解しやすいように敢えて書き加えています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文にはありません
・古語拾遺はテーマ別に記されており、他書と違って時系列順になっていない部分があるので、一部の順序を入れ替えてます
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・他書との比較のため、神名はカタカナで表記しており、また「~のみこと」「~のかみ」などの尊称を省略しています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです(複数ある場合は「、」で区切っています)
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解しやすいように敢えて書き加えています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文にはありません
・古語拾遺はテーマ別に記されており、他書と違って時系列順になっていない部分があるので、一部の順序を入れ替えてます
史書の概要
『古語拾遺』の概要について、簡単にまとめておきます。
・書名:古語拾遺(こごしゅうい)
・編者:斎部広成(いんべのひろなり)
・成立:807年(平安時代)
・発端:古くは人々は口伝で歴史を伝えていたが、その風習が棄てれていくために敢えて文章としてまとめることにした
・背景:祭祀を司る中臣氏に対抗するための「愁訴陳情書説」と、朝廷の法制整備のための忌部氏の「調査報告書説」がある
・発見:平安期に朝廷に提出された文書
・特徴:説話の多くが要約されて載せられるが、忌部氏(斎部氏)の祖神が関わったとする内容の記述が多い
・編者:斎部広成(いんべのひろなり)
・成立:807年(平安時代)
・発端:古くは人々は口伝で歴史を伝えていたが、その風習が棄てれていくために敢えて文章としてまとめることにした
・背景:祭祀を司る中臣氏に対抗するための「愁訴陳情書説」と、朝廷の法制整備のための忌部氏の「調査報告書説」がある
・発見:平安期に朝廷に提出された文書
・特徴:説話の多くが要約されて載せられるが、忌部氏(斎部氏)の祖神が関わったとする内容の記述が多い
史書の内容
天地開闢
・天地が分かれて初めて天に生まれた神を、アメノミナカヌシという
・次に、タカミムスビが生まれた
・次に、カミムスビが生まれた
タカミムスビの子孫
・タカミムスビは これらの子を生んだ
・生んだ娘の名は、タクハタチチヒメという
・生んだ息子の名は、アメノオシヒという
・生んだ息子の名は、アメノフトタマという
・フトタマは これらの神を率いている
・その名を、アメノヒワシという(阿波国の忌部の祖である)
・その名を、テオキホオイという(讃岐国の忌部の祖である)
・その名を、ヒコサシリという(紀伊国の忌部の祖である)
・その名を、クシアカルタマという(出雲国の忌部の祖である)
イザナギとイザナミ
・天地の初めにイザナギとイザナミの二神は夫婦となったという
・まず、オオヤシマノクニや山・川・草・木を生んだ
・次に、日神(アマテラス)と月神(ツクヨミ)を生んだ
・次に、スサノオを生んだ
・スサノオは常に泣き叫ぶため、人々や青山が枯れた
・そこで、父母はその行いを咎めて根の国に退くように命じた
※原文では序盤に記されるが、他書と比較するために順序を入れ替えることにする
誓約
・スサノオが日神に別れを告げようと天に登った時、クシアカルタマが出迎えた
・そこで、ミズヤサカニノマガタマを献上すると、後にスサノオが日神に献上した
・そして、スサノオと日神は共に誓約をすると、その玉から天祖のアカツ(オシホミミ)が生まれた
・これを以って日神はアカツを育てることにした
・日神はアカツを寵愛するあまり、常に脇の下に抱いていたことからワカコ(腋子)と呼ぶようになった
天岩戸
・その後、スサノオが日神に行った行為は酷いものであった
・例えば、畔を壊す、溝を埋める、水門を開く、種を重ねて蒔く、田に櫛を挿す などである
・また、イキハギ、サカハギをしたり、汚物を撒き散らしたりもした
・なお、新嘗の際に戸に糞尿を塗ったり、機殿に皮を剥いだ馬を投げ入れたりしたことは、中臣の祓い詞となっている
・こうした種々の天罪にアマテラスは激怒し、アメノイワヤに籠ってしまった
・すると、国中が常闇に包まれて昼夜の区別がつかなくなった
・そのため、神々は手足の置き場も分からなくなったが、燭(ともしび)を燈すことで一時を凌いだ
・タカミムスビは八百万の神をアメノヤスカワの河原に集めて、今後の方策を議論した
・その際、オモイカネが深く思考を凝らして策を練り上げて、その方策を皆に伝えた
・まずは神々に祭具を造らせることにした
・まず、フトダマにトモノカミ(部神)を副えて和幣(ニギテ)を作らせた
・次に、イシコリドメに天香山の銅を採らせて、ヒカタノカガミを鋳造させた
・次に、ナガシロハに麻で青和幣を作らせた
・次に、アメノヒワシにツクイミを副えて殻木を植えさせ、白和幣(木綿)を作らせた
・次に、アメノハツチヲに文布を織らせた
・次に、アメノタナバタヒメに神衣(和衣)を織らせた
・次に、クシアカルタマにヤサカニノイホツミスマルノタマを造らせた
・次に、テオキホオイとヒコサシリの二神に天御量(アメノミハカリ)、瑞殿、御笠、矛盾を造らせた
・次に、アマノメヒトツに種々の刀、斧、サナギ(銅鐸)を造らせた
・祭具の次は、祭祀の準備に取り掛かかるように言った
・まず、天香山のイホツマサカキを掘り出すこと
・次に、その上段の枝に玉を掛けること
・次に、その中段の枝に鏡を掛けること
・次に、その下段の枝に青和幣と白和幣を掛けること
・祭祀の準備が整うと、このような形で祭祀を行うように言った
・まず、フトダマはイホツマサカキを持って讃えること
・次に、アメノコヤネと相共に祈祷をすること
・また、アメノウズメには、このような格好をさせることにした
・まず、マサキズラをカズラ(髪飾り)とする
・次に、ヒカゲを襷掛けにする
・次に、竹の葉とオケノキの葉をタクサ(手草)として持つ
・次に、サナギを付けた矛を手に持つ
・また、アメノウズメには、このような形で祭祀を行わせることにした
・まず、岩戸の前にウケブネ(誓約をするための桶)を置く
・次に、庭火を炊く
・次に、俳優を行って相共に歌い舞う
・オモイカネが このように方策を伝えると、神々は早速 各々の仕事に取り掛かった
・その際、イシコリドメが鋳造したヒカタノカガミに やや問題があった
・最初に鋳造した鏡は小さくて意にそぐわなかった(これは紀伊国のヒノクマノカミの鏡である)
・次に鋳造した鏡は麗しく出来上がった(これは伊勢の大神である)
・鏡が出来あがると、諸々の祭祀の準備はすべて整った
・そのため、準備を方策どおりに執り行った
・その際、フトダマが このように称え詞を申し上げた
・「私が持っている鏡は光り輝いて、まるで日神の様であります」
・「ぜひ、岩戸を開けて ご覧になってください」
・そして、フトダマはアメノコヤネとともに祈祷をした
・すると、アマテラスは心の中で このように思った
・「近頃、私が岩戸に籠って天下が暗闇となっているはずだが、どうして神々は楽しそうなのだろうか」
・そこで、アマテラスが岩戸を開けて外を覗いた時にアメノタヂカラオに戸を開けさせて、新殿に遷座させた
・また、アメノコヤネとフトダマがヒノミツナ(シリクメナワ)を新殿に廻らせた
・また、御前にはオオミヤメを侍らせた(この神はフトダマの子である)
・また、新殿の門にトヨイワマドとクシイワマドを配して守護させた(二神ともフトダマの子である)
・すると、天上が晴れわたり、諸共の顔が白く明るく見えたので、皆で歌い舞って このように讃えた
・アハレ(天が晴れることを指す)
・アナオモシロ(皆の面が白いということを指す)
・アナタノシ(今の楽事のことを指す)
・アナサヤケ(竹の葉の音を指す)
・そして、アメノコヤネとフトダマの二神は、アマテラスに岩戸に戻らないように言った
スサノオの追放
・スサノオは今回の罪でチクラオキド(罰の名)を科された
・そのため、鬚と手足の爪を抜いて罪を購い、天上から追放された
・スサノオは天から出雲のヒノカワの河上に天降った
・そして、アメノトツカノツルギ(アマノハバキリ)でヤマタノオロチを斬り、その尾から霊剣を得た
・この剣は、今は石上神宮にある
・その霊剣の名をアメノムラクモといい、天神に献上した
・この剣は後にヤマトタケルに渡り、これで草を薙ぎ払って火を免れたことからクサナギノツルギと呼ばれた
・その後、スサノオは国神の娘を娶り、オオナムチを生んだ
・そして、遂に根国に行った
オオナムチ
・オオナムチには別名がある
・またの名を、オオモノヌシという
・またの名を、オオクニヌシという
・またの名を、オオクニタマという
・今は大和国のシキウエの郡のオオミワカミである
・オオナムチはスクナヒコナと共に力を併せて天下を経営した
・その間には、ソウセイチクサン(蒼生畜産)のために病気を治す方法を定めた
・また、鳥獣や昆虫の為す災いを祓おうとして、マジナイの法を定めた
・これらは今に至るまで百姓に恩恵を与えている
葦原中国平定
・天祖のアカツ(オシホミミ)はタカミムスビの娘のタクハタチヂヒメを娶り、アマツヒコを生んだ
・アマツヒコはコウソン(皇孫)の命とも云われる
・アマテラスとタカミムスビの孫であるために皇孫と言う
・アマテラスとタカミムスビは、皇孫を天降らせてトヨアシハラナカツクニの君にしようと考えた
・そこで、フツヌシ(香取神)とタケミカヅチ(鹿島神)を葦原中国に遣わして、国神を駆逐して平定させた
・よって、オオナムチとコトシロヌシは共に退去したのである
・なお、オオナムチは退去する際、国を平定した矛を二神(フツヌシ・タケミカヅチ)に授けて このように言った
・「私は この矛で国を平定した」
・「天孫が この矛で国を治めたならば、必ず平安が訪れるであろう」
・「今から私は退去することにしよう」
・オオナムチは この後に隠れた
・そして、二神は帰順しない悪しき神々を誅して平定し、天に帰って復命した
天孫降臨
・アマテラスとタカミムスビは葦原中国を治めるべく話し合った
・そして、皇孫に このように言った
・「葦原瑞穂国は、私の子孫が君となるべき地である」
・「皇孫よ、汝が降りて治めなさい」
・「そうすれば、天皇の位が栄えることは天壌無窮(てんじょうむきゅう)であろう」
・そして、皇孫に八咫鏡と草薙剣の二品の神宝を授け、これを天璽とした
・なお、矛と玉は自ら従った
・また、次いで このような勅命を下した
・「この宝鏡を見ることは、私を見ることと同じことである」
・「故に、同じ床、同じ殿で斎鏡としなさい」
・また、皇孫に アメノコヤネ、フトダマ、アメノウズメを侍らせて、このような勅命を下した
・「汝らは、私の代わりにアマツヒモロギ、アマツイワキを立て起こし、私の子孫のために斎奉るべきである」
・「故に、アメノコヤネとフトダマの二神はアマツヒモロギを持って葦原中国に降り、私の子孫のため斎奉りなさい」
・「また、汝ら二神も御殿に侍り、皇孫を守護しなさい」
・「そして、高天原のユニワの穂を我が子に捧げなさい」
・「また、フトダマは諸部の神(職を司る神々)を率いて、その職を為して供に仕えよ」
・また、皇孫に諸神も副え従わせた
・また、オオモノヌシには このように勅命を下した
・「汝は八百万の神を率いて、末永く皇孫を守護しなさい」
・そして、アメノオシヒ(大伴の遠祖)とアメノクシツオオクメ(久米部の遠祖)に杖を帯びさせて、先に様子を調べさせた
・すると、二人が戻って来て このように報告した
・「一人の神がアメノヤチマタに居ります」
・「その鼻の長さは七咫、背の高さは七尺、口の端は輝いており、目は八咫鏡のようであります」
・そこで、その神の正体を明かすために神を遣わして素性を問うたが、皆 名前を聞くことすら出来なかった
・故に、アメノウズメを召して、その神の正体を明かすように勅命を下した
・すると、アメノウズメは胸を露わにし、裳裾を臍の下まで下げて その神を見て嘲笑った
・その神は奇妙なことをするアメノウズメに反応して、このように問うた
・「貴方は何故そのようなことをするのだ?」
・そこで、アメノウズメは このように問い返した
・「汝こそ天孫が通る道に座して何をしている?」
・すると、その神は このように答えた
・「私は天孫が天降ると聞いて迎えに来たサルタヒコである」
・それを聞いたウズメは このように問うた
・「汝は何処に行くつもりだ?また、天孫を導くつもりなのだ?」
・サルタヒコは このように答えた
・「天孫は筑紫の日向の高千穂のクシフルノミネに到るのが良いだろう」
・「なお、私は伊勢の狭長田の五十鈴川の河上に到るつもりである」
・「また、貴方(アメノウズメ)は私の名を顕したので、私は貴方に送ってもらうことにしよう」
・アメノウズメが この一連のやり取りを天孫に報告した
・すると、天孫が天降る際、アメノウズメにサルタヒコを送ってやるように命じた
・その後、アメノウズメはサルタヒコの名を氏名とし、その一族は男女問わず猿女君と名乗るようになった
・天孫が無事に天降ると、諸神は勅命を受けて歴代の天孫を助けることに定まり、各々がその職を以って諸共に仕えた
・その後、天祖のヒコホが海神の娘のトヨタマヒメを娶り、ヒコナギサを生んだ
・なお、ヒコナギサの生まれる産屋を建てる際、アメノオシヒト(掃守連の遠祖)は放棄を作って蟹を掃いて準備を整えた
・そのため、その職の名前をカニモリという
※この後、天武天皇までの歴史が記される
御歳神
・昔、神代にオオトコヌシノカミ(大地主神)が田を作ろうとしたとき、百姓に牛肉を食べさせた
・すると、ミトシノカミ(御歳神)の子が田にやって来て その行いを責め、その有様を父に報告した
・それを聞いたミトシノカミは激怒して、田にイナゴを放って苗葉を忽ちに枯れ果てさせた
・田が枯れた原因が分からなかったオオトコヌシはカタカムナギ(米占い)をし、その理由を占った
・その結果"ミトシノカミの祟り"と出て、その対策は"白猪・白馬・白鶏を献上して怒りを鎮めよ"と出た
・そこで、オオトコヌシは占いの通りに品を揃えて献上し、ミトシノカミに謝罪して奉った
・すると、後にミトシノカミから"私の思いは麻柄を以って働き作れ"という答えを賜った
・これは即ち、"葉で天押草を作り、それを烏扇で扇いでイナゴを祓え"というものであった
・これでもイナゴが去らなければ、"牛肉を溝口に置いて男茎形を作り、それを添えて祓え"というものであった
・これは、その怒り以って成す厭所(嫌な所)である
・オオトコヌシが教えの通りにすると、苗葉は再び茂り、年穀も豊かに実った
・これが今、神祇官が白猪・白馬・白鶏を以ってミトシノカミ(御歳神)を祀る事の起源である 云々
後書
参考文献
・古語拾遺(ウィキペディア)
・古語拾遺(角館總鎭守神明社)
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「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。
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