荒神谷遺跡 [島根県]
2019/03/24
島根県出雲市にある荒神谷遺跡(こうじんだにいせき)です。
大量の銅剣・銅鐸・銅矛が一括して出土した遺跡として有名で、国の史跡にも指定されています。
また、周辺はレジャーを楽しめる公園になっており、出土品については博物館で見ることができます。
遺跡について
概要
荒神谷遺跡は、昭和58年(1983年)の広域農道(出雲ロマン街道)の建設にともなう遺跡分布調査で発見された遺跡です。調査員が田んぼの畦で古墳時代の須恵器片を拾ったことをきっかけに発掘調査が始まり、遺跡の南側に「三宝荒神」が祀られていることから「荒神谷遺跡」と名付けられたそうです。
発掘調査が開始されて以降、昭和59年(1984年)に遺跡の谷あいの斜面から358本の銅剣が出土し、昭和60年(1985年)には隣接地で銅矛16本、銅鐸6個が出土したことから、それまでの文化圏説を覆す日本史上最大の発見として脚光を浴び、古代出雲の勢力を解明する重要な手がかりとなる遺跡となったとされています。
なお、荒神谷遺跡は『出雲国風土記』にある「出雲郡の神名火山」に比定されている仏経山(ぶっきょうざん)より北東3kmに位置する斐川町神庭西谷にあります。
出土した青銅器
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出土した弥生時代の青銅器(銅剣・銅鐸・銅矛)は仏経山から延びる山間の谷斜面に埋まっていたとされ、現在では発見当時の状況が再現されています。
銅剣(どうけん)は、すべて「出雲型銅剣(中細型C類)」と呼ばれるもので、全長50~53センチあり、うち344本には基部(根本)に「×」が刻印されているという特徴があります。なお、同型式の銅剣は山陰地方でこれまでに3ヵ所11本が出土していることから「地元産のもの」とする説が強く、弥生時代の当地方の状況を考える上で重要なものとされています。
銅鐸(どうたく)は、当遺跡からは高さ約22~24センチの小型品6個が出土しており、国内最古の型式のものも含まれているとされています。
銅矛(どうほこ)は、長さ70~84センチで、北九州で出土した銅矛によく見られる"刃部を綾杉状の文様に研ぎ分けた例"があることから、北部九州産と考えられているそうです。
これらの青銅器が埋葬された時期は、いわゆる邪馬台国が登場する以前の弥生時代中期後半~後期の始め頃と考えられており、銅剣358本、銅鐸6個、銅矛16本という大量の青銅器が一括して発見される例もこれまでにないとされています。
また、この発見は それまでの青銅器の分布から銅剣=瀬戸内、銅鐸=近畿、銅矛=北九州という文化圏に分かれていたという説を覆すものであり、青銅器の量からしても"出雲地方に近畿や北九州に匹敵するほどの勢力が存在したことを証明するもの"であるといわれています。
三宝荒神について
三宝荒神は荒神谷遺跡の遺跡名の由来となった神社で、遺跡の南(公園の外側)に位置しています。
江戸時代の天保の大飢饉の際に人々を飢餓から救うため祀られたんだそうです。
荒神谷史跡公園について
荒神谷史跡公園は、荒神谷遺跡を中心として整備された公園です(入園無料)。
荒神谷遺跡をはじめ、復元住居や水田などを見ることができ、バーベキューを楽しむこともできます。
荒神谷博物館について
荒神谷博物館は公園内に設けられた博物館で、遺跡の出土品の展示・解説などが行われています(有料)。
青銅器・土器・ジオラマなどを見ることができ、その他にも遺跡を題材としたビデオやゲームを楽しむこともできます。
また、ミュージアムショップでは銅鐸などの置物や関連書籍、古代米などが販売されています。
なかなかコンテンツが充実しているので、遺跡・遺物に興味のある方ならば一日楽しめるオススメのスポットです。
関連知識
青銅器について
青銅器(せいどうき)とは、青銅(主に銅と錫の合金)を溶かして鋳型に流し込んで作られるもので、種類としては剣・矛・戈・鏃などの武器類と、鐸・鏡・釧(くしろ)などの祭器があり、荒神谷遺跡では剣・矛・鐸が出土しています。
青銅器は弥生時代前記に朝鮮半島を経由して日本に伝わり、武器型のものは最初は実戦に用いられていたとされますが、ほぼ同時期に鉄器や製鉄技術が伝来していることから、武器は鉄器に代わり、青銅器は祭器になったと考えられています。
銅剣とは?
銅剣(どうけん)とは、武器型の青銅器で「短い柄を付けて突き刺すのに用いた」と考えられています。初期のものは細型で武器として使ったと考えられ、後期のものは巨大化していることから祭器として用いられていたと考えられています。
・製法:銅に少量の錫や鉛を混ぜた合金を溶かして鋳型に流し込んで作った(作ってすぐは黄金色だった)
・型式:細型 → 中細型 → 平型
・長さ:細型(約35cm)・中細型(50cm以上)・平型(約45cm)
・重さ:0.6kg(中細型の再現銅剣の重さ)
・用途:武器 → 祭器(悪霊をはらうもの)
・出土:九州・四国・中国
・備考:荒神谷遺跡、加茂岩倉遺跡から出土した銅剣には根本に「×」が刻印されているものがある
・型式:細型 → 中細型 → 平型
・長さ:細型(約35cm)・中細型(50cm以上)・平型(約45cm)
・重さ:0.6kg(中細型の再現銅剣の重さ)
・用途:武器 → 祭器(悪霊をはらうもの)
・出土:九州・四国・中国
・備考:荒神谷遺跡、加茂岩倉遺跡から出土した銅剣には根本に「×」が刻印されているものがある
銅鐸とは?
銅鐸(どうたく)とは、祭器として用いられていたとされる青銅器で、現在では「マツリのための道具」「神を呼ぶカネ(楽器)」であると考えられているようです。ルーツは古代の中国や朝鮮半島で家畜の首につけられていた小さな鈴であるといわれています。
・型式:菱環鈕式(最古段階) → 外縁付鈕式(古段階) → 扁平鈕式(中段階) → 突線鈕式(新段階)
・長さ:菱環鈕式(20cm強)・外縁付鈕式(約30cm)・扁平鈕式(40cm強)・突線鈕式(70cm弱)
・重さ:1.2kg(菱環鈕式の再現銅鐸の重さ)
・用途:祭器(楽器)
・出土:兵庫・滋賀・和歌山・徳島・島根(主に近畿圏)
・備考:国内最大の銅鐸は134.7cm、45.470kgもある
・長さ:菱環鈕式(20cm強)・外縁付鈕式(約30cm)・扁平鈕式(40cm強)・突線鈕式(70cm弱)
・重さ:1.2kg(菱環鈕式の再現銅鐸の重さ)
・用途:祭器(楽器)
・出土:兵庫・滋賀・和歌山・徳島・島根(主に近畿圏)
・備考:国内最大の銅鐸は134.7cm、45.470kgもある
銅矛とは?
銅矛(どうほこ)とは、武器型の青銅器で「長い棒状の柄を付けて両手で持って突き刺すのに用いた」と考えられています。初期のものは細型で武器として使ったと考えられ、後期のものは巨大化していることから祭器として用いられていたと考えられています。
・型式:細形 → 中細形 → 中広形 → 広形
・長さ:細形(40cm弱)・中細形(60cm強)・中広形(80cm強)・広形(約85cm)
・重さ:2.7kg(広形の再現銅矛の重さ)
・用途:武器 → 祭器(悪霊をはらうもの)
・出土:主に北九州
・備考:根本の半環状の部分を耳といい、耳には布などを結んで旗印なんかに使用したと考えられている
・長さ:細形(40cm弱)・中細形(60cm強)・中広形(80cm強)・広形(約85cm)
・重さ:2.7kg(広形の再現銅矛の重さ)
・用途:武器 → 祭器(悪霊をはらうもの)
・出土:主に北九州
・備考:根本の半環状の部分を耳といい、耳には布などを結んで旗印なんかに使用したと考えられている
青銅器はなぜ埋められていたのか?
青銅器が埋められているのは、主に「集落から離れた見晴らしの悪い丘陵斜面」「集落から隔絶した見晴らしの良い山頂・山腹」「集落近くの低平地」の3パターンですが、埋められている理由には未だに定説は無いそうです。
そこで現在唱えられている説には以下のようなものがあります。
・祭祀説:雨乞・収穫・地鎮など、大地に豊穣の祈りを捧げるため
・保管説:祭祀に使うまでは使わないので、普段は土中に保管した
・隠匿説:宝物として扱っていたため、部外者に見つからないように隠した
・廃棄説:不要になったため、土中に廃棄した
・境界埋納説:共同体間の抗争の緊張から生まれた"境界意識"の反映
・保管説:祭祀に使うまでは使わないので、普段は土中に保管した
・隠匿説:宝物として扱っていたため、部外者に見つからないように隠した
・廃棄説:不要になったため、土中に廃棄した
・境界埋納説:共同体間の抗争の緊張から生まれた"境界意識"の反映
荒神谷史跡公園の見どころ(野外)
管理棟
公園内にある管理棟です。
休憩所および研修室として使用されています。
古代復元住居
公園内にある古代復元住居です。
弥生時代の竪穴式住居が復元されています。
2000年ハス
公園内にある2000年ハスです。
二千年前の地層に埋まっていたハスの種を開花させたものなんだそうです(季節的に枯れていた)。
古代農耕地
公園内にある古代農耕地です。
古代米が栽培されており、赤米・黒米はミュージアムショップで購入することもできます。
博物館の見どころ(無料ゾーン)
情報コーナー
館内の無料ゾーンでは、遺跡に関する簡単な解説が行われています。
出土品のレプリカに触ったり重さを測ったりすることができるのでなかなか面白かったです。
ミュージアムショップ
ミュージアムショップでは、関連書籍や出土品をモチーフにした置物などが販売されています。
また古代米など珍しいものも販売されているので、一見する価値があります。
博物館の見どころ(有料ゾーン)
青銅器
博物館に展示されている青銅器です。
関連する説明も分厚い内容になっているので、なかなか読み応えがあります。
土器
博物館に展示されている土器です。
土器の他にも勾玉や鉄器など、様々なものが展示されています。
ジオラマ
博物館に展示されているジオラマです。
弥生時代の人々の生活や、青銅器を作っている様子などが再現されています。
荒神谷展示室
館内にある荒神谷展示室です。
遺跡に関するビデオ鑑賞や、モニタを使ったコンテンツを楽しむことができます。
デジタルミュージアム
展示室のモニタでは、デジタルミュージアムを楽しむことができます。
ゲーム
展示室のモニタでは、荒神谷遺跡を題材としたゲームを楽しむことができます。
クイズゲームをしながら遺跡について学べるので、お子さんのいる方にオススメです。
料金: 無料(常設展は有料)
住所: 島根県出雲市斐川町神庭873ー8(マップ)
営業: 9:00~18:00(詳しくは公式サイト参照)
交通: 荘原駅(徒歩38分)
公式サイト: http://www.kojindani.jp/iseki/
住所: 島根県出雲市斐川町神庭873ー8(マップ)
営業: 9:00~18:00(詳しくは公式サイト参照)
交通: 荘原駅(徒歩38分)
公式サイト: http://www.kojindani.jp/iseki/
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「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。
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