人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

粟田祭(あわたまつり)とは、粟田神社で毎年10月に行われる神社最大の祭礼行事であり、体育の日の3連休に行われる「出御祭(おいでまつり)」「夜渡神事」「神幸祭・還幸祭(しんこうさい・かんこうさい)」と、その翌週の木曜日に行われる「例大祭(れいたいさい)」を指します。

この祭の始まりは平安中期(1001年)とされ、その年の旧暦9月9日の夜、祇園社に現れた一人の神童から「今日より7日後に祇園社の東北の地に瑞祥が現れる。そこに神幸すべし」とのお告げを受け、7日後の旧暦9月15日にお告げのとおりに粟田神社鎮座地に瑞光が現れたため御神幸が行われ、それが粟田祭の始まりなったと伝えられているそうです。

そのため、約一千年の歴史を持つ由緒ある祭であり、室町時代に祇園祭が齋行できなかった際には、粟田祭を以ってその代わりとしたとも云われています。

今回は「出御祭(おいでまつり)」と「夜渡神事(よわたりしんじ)」に参加してきたので、そのレポートを記載したいと思います。


主催する神社について

粟田神社とは?


人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

粟田神社(あわたじんじゃ)は京都市東山区に鎮座しており、祭神にスサノオ、オオナムチなどを祀る厄除け・病除けの神社です。京都の東の出入口である粟田口に位置しているため、旅立ち守護・旅行安全の神としても知られています。

また、粟田口の刀工とも関わりが深いため、末社の鍛冶神社では鍛冶の神も祀っています。

詳しくはこちらの記事を参照:【粟田神社】

出御祭

出御祭の概要


人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

出御祭(おいでまつり)とは本殿に祀られる神殿を神輿に勧請する祭であり、儀式は当日の22:00に行われます。

そのため、神事の前に神を盛り上げるための神賑行事が行われ、参拝客にとってはこちらがメインとなります。

なお、出御祭当日のタイムスケジュールは以下の通りです。

出御祭当日のタイムスケジュール


・17:30:ウェスティン都ホテルの夜店(カレー、たこ焼きの屋台)
・18:30:石見神楽奉納
・19:30:ビンゴゲーム・奉献酒抽選会
・22:00:出御祭

上記の催しは、その開催年によって変更される場合があるようです。

なお、時間の都合上、ビンゴゲームの最中までの参加となりましたので、そこまでのレポートを記載します。

出御祭当日の境内の様子


人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

出御祭の当日は、参道に翌日に使用される「大燈呂」が、境内には神幸祭で使用される神輿剣鉾が展示されます。

そのため、明るい内に一度訪れておくと、普段は見れない様々な祭具を見ることができます。

なお、17:00頃には大燈呂がライトアップされ、祭の雰囲気を盛り上げます。

大燈呂ギャラリー


人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

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神輿・剣鉾ギャラリー


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出御祭当日の催し


人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

出御祭の当日はカレーやタコ焼きなどの夜店が出て、石見神楽の奉納やビンゴゲームなどの催しが行われます。

ビンゴカードは参道で無料配布されており、祭に始まる前に行けば貰えます。なお、ビンゴの景品は子供用の玩具からバッグや商品券、さらには旅行券など様々であり、なかなか豪華な景品が用意されています。

また、石見神楽は京都造形芸術大学の石見神楽サークル「京都瓜生山舞子連中」によって行われ、2015年の演目は「恵比須・大黒」と「大蛇」が舞われました。その様子は以下のビデオにてご覧ください。




石見神楽についてはこちらの記事を参照:【石見神楽】

夜渡神事

夜渡神事の概要


人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

夜渡神事(よわたりしんじ)とは粟田の大神様(牛頭天王)を祭り上げる祭礼であり、「松明」を先頭にして「剣鉾」と「大燈呂」が夜の街を練り歩くという祭となっています。

なお、巡行の前には知恩院の前にある「瓜生石(うりゅうせき)」に神輿の神霊を遷して祀るという「れいけん祭」が行われ、知恩院の僧侶と粟田神社の神職が共に祭事を執り行うという珍しい光景を見ることができます。

なお、夜渡神事当日のタイムスケジュールは以下の通りです。

夜渡神事当日のタイムスケジュール


・13:00:剣鉾清祓い(各鉾町)
・16:45:お迎え行列
・17:30:本殿出発祭
・18:00:夜渡り神事齎行
・18:20:れいけん祭~夜渡行列・大燈呂巡行(22:00まで)

なお、夜渡行列と大燈呂・小燈呂巡行は途中からルートが変わるようです。

主な見どころは19:00前後から行われる大燈呂巡行とされています(ルートは配布されるパンフレット参照)。

れいけん祭


人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

れいけん祭とは、粟田神社知恩院の合同で行われる神仏習合の神事であり、以下の故事が由来しているとされます。

れいけん祭の由来


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約400年前の旧暦9月14日の夜、大きな石の上を瓜が覆っており、そこに御金札(金のおふだ)があって光り輝いていた。

その金札には「感神院新宮(現・粟田神社)」と銘があったため、神の御降臨であるとして神社に納められ、金札の現れた石は「瓜生石(うりゅうせき)」と名付けられた。

この故事により毎年、御神宝の阿古陀鉾と地蔵鉾が「夜渡神事」と呼ばれる行列を為し、金札の現れた瓜生石の周りを三度巡拝する「れいけん」の神事を執り行うようになった。

なお、「れいけん」とは「霊験」の意であると考えられており、粟田の大神様(牛頭天王)が降臨したことを畏れ敬い感謝を表す祭りとされています。

粟田大燈呂


人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

粟田大燈呂(あわただいとうろ)とは粟田祭で用いられる大きな灯篭の山車のことであり、この大燈呂が行列を為す夜渡神事は平安中期(1001年)から江戸後期(1832年)まで途絶えることなく続いたとされています。

しかし、江戸時代に大勢の見物人が殺到してケガ人が続出したため、それを境に大燈呂行列は中止になったとされますが、2008年に復活を果たし、以来 現在まで続けられています。

なお、現在の大燈呂は京都造形芸術大学の学生らによって製作されていることから、なかなか近代的なデザインとなっています。また、祭で用いられる大燈呂の種類は開催年によって変化すると思われるため、その年でしか見られないものもあるようです。

夜渡神事の流れ


人文研究見聞録:粟田神社の粟田祭2015 [京都府]

夜渡神事は「れいけん祭」からがメインとなります。そのため、18:00頃に知恩院前に待機しておくと良いと思います。

その「れいけん祭」では、まず知恩院の僧侶が瓜生石に向かってお経を上げ、次に粟田神社の神職が祝詞を上げ、その後、僧侶と神職および氏子らが石の周りを三度巡拝します。その際、大燈呂は激しく揺り動かされ、神の勧請を表現しているような動きを見せます。

それを終えると大燈呂が行列用に隊列を組み「大燈呂巡行」がスタートします。なお、行列は知恩院から神宮道を真っ直ぐに進み、その後は巡行ルートに従って巡回します。そして、22:00を目処に粟田神社に到着し、そこで巡行は終了します。

夜の街を照らす大燈呂は非常に美しく、かつ、迫力満点の行列となっており、非常に見ごたえがあります。

なお、その様子は下記のビデオにまとめてありますので、ぜひご覧ください。


料金: 無料
住所: 京都市東山区粟田口鍛冶町1番地
営業: 6:00~17:00(粟田祭の日には22:00頃まで)
交通: 蹴上駅(徒歩6分)、東山駅(徒歩9分)

公式サイト: 
http://www.awatajinja.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。