人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]

京都市左京区にある御辰稲荷神社(おたついなりじんじゃ)です。

江戸時代に創建された稲荷神社で、祭神に宇迦之御魂神・猿田彦神・天宇受売神を祀っています。

芸能上達の御利益があるとされており、願が叶う真黒色の伝説も伝えられています。


神社概要

由緒


由緒書等によれば、宝永2年(1705年)に東山天皇の側室であった新崇賢門院の夢枕に一匹の狐が現れて「御所の辰巳の方角に森があるので、そこに我を祀れ」と告げ、これを知った天皇の勅許を受けて創建された稲荷社であるとされています。なお、当社が祀られた場所が御所の辰巳の方角の聖護院の森であったことから、御辰稲荷と呼ばれるようになったそうです。

また、夢に現れた狐(御辰狐)は琴を得意とし、その琴の音は都の人々を魅了したことから「京の風流狐は、碁を好む宗旦狐と琴の上手な御辰狐」と謳われ、御辰稲荷の「辰」の字が「達」に通じるとされたことから、芸事の上達の御利益が得られると信じられており、古くから芸能の神として信仰を集めているとされています。

祭神


御辰稲荷神社の祭神は以下の通りです。

・[中央]宇迦之御魂神(ウカノミタマ):稲荷神であり、スサノオの御子神とされる
・[左神]猿田彦神(サルタヒコ):天孫・瓊々杵尊が降臨した際に道案内した神
・[右神]天宇受売神(アメノウズメ):岩戸隠れの際に舞い踊った芸能の始祖とされ、猿田彦神の妻となったとされる

境内社


人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]
福石大明神
人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]
初辰大明神
人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]
亀石大明神

御辰稲荷神社の境内社は以下の通りです。

・福石大明神:真黒色の祈願所
・初辰大明神:辰年生まれの守護神とされる
・亀石大明神:亀霊が遷った自然石を神として祀る

関連知識

真黒色


人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]

当社には願いが叶うといわれる真黒色の伝説があり、当社で授けられた真黒色を福石大明神の前に置いて願を掛け、持ち帰って御守りにするか、神棚に祀って日々願を掛けると、願いが叶うといわれています(初穂料500円)。

なお、その伝説の内容は以下の通りです。

願いの叶う真黒色(まぐろいし)

昔、白川橋の畔に貧しい夫婦が住んでおり、夫は野菜を売り歩き、妻は近所の子守に呼ばれて生計を立てていた。妻は御辰稲荷を深く信仰しており、いつか幸せになれるようにと日々 願を掛けていた。

百日の願掛けの満願の日、参拝を終えてホッとした妻は、境内でそのまま転た寝してしまった。ある程度 時間が経ち、襟首に吹き込む冷たい風に目を覚ました妻は、右手に堅い感触があることに気付き、手を開いてみると そこには真っ黒な小石が入っていた。妻は、きっと稲荷様が授けてくださったものに違いないと信じ、それを持って自宅の神棚に祀った。

それからしばらく後、妻は身籠って、やがて玉のような女の子を産んだ。この女の子は美しく成長し、あるとき大名に娶られてお部屋様(おきさきさま)となった。こうして貧しい夫婦は幸せに暮らせるようになった。

その後、この福石の伝説が世間に広まって、真っ黒な石を持って幸せを願いに御辰稲荷を訪れる人々が多くなり、これ以来、幸福・願事の叶う福石と呼ばれて諸々の願を掛けられるようになったという。

境内の見どころ

鳥居


人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]

御辰稲荷神社の鳥居です。

社殿


人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]

御辰稲荷神社の社殿です。

狐像


人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]

御辰稲荷神社の狐像です。

奉納図画


人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]

御辰稲荷神社の社殿内には、御辰狐の図画が奉納されています。

奉納狐面


人文研究見聞録:御辰稲荷神社 [京都府]

御辰稲荷神社の社殿内には、狐面が奉納されています。

料金: 無料
住所: 京都府京都市左京区聖護院円頓美町29-1(マップ
営業: 9:00~16:00
交通: 神宮丸太町駅(徒歩11分)
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。