人文研究見聞録:少彦名神社 [大阪府]

大阪市中央区道修町にある少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)です。

オフィス街の一角に鎮座する神社であり、日本の薬の神として少彦名命(スクナヒコナ)、中国の薬の神として神農炎帝(しんのうえんてい)を祀っています。

なお、祭神に因んで「道修町の神農(しんのう)さん」「神農さん」とも呼ばれ、日中の薬の神を祀っていることから病気平癒・健康成就に御利益があるとされています。

また、神社の横には「くすりの道修町資料館」が併設されており、そこでは江戸時代から現在に至るまでの薬種業者による関係資料を見ることができます。


由緒

人文研究見聞録:少彦名神社 [大阪府]
拝殿

江戸中期の安永9年(1780年)、薬種業者団体が薬の安全と薬業の繁栄を願うために、京都の五條天神宮より少名彦命のこの地に勧請し、既に仲間の寄合所に祀っていた神農炎帝と共に祀ったことに始まるとされています。

その後、天保8年(1837年)の大塩平八郎の乱で仲間会所が焼失したため、天保11年(1837年)に仲間会所内に祠堂を設けて祭神を遷座したそうです。

明治以降は、大阪府より近隣の神社に祭神を合祀するか、独立した神社として継続させるかの判断を求める旨の訓令を受け、独立した神社として祭神を護持していくことに決め、その際に境内地の拡充、社殿・社務所を新築し、明治43年(1910年)に正遷宮を斎行するに至ったとされています。

祭神

人文研究見聞録:少彦名神社 [大阪府]

少彦名神社の祭神は以下の通りです。

主祭神

・少彦名命(スクナヒコナ):国造りの神(日本医薬の祖神として祀られる)
・神農炎帝(しんのうえんてい):古代中国における三皇五帝の一人(中国医薬の祖神として祀られる)

張子の虎


人文研究見聞録:少彦名神社 [大阪府]
張子の虎
少彦名神社のある道修町(どしょうまち)は、豊臣時代から薬種業者の集まる「くすりの町」として知られており、江戸時代に大阪でコレラが流行した際は、道修町の薬種業者が「虎頭殺鬼雄黄圓(ことうさっきおうえん)」という丸薬を調合し、神前で祈祷したのちに「張子の虎(はりこのとら)」の御守りと共に庶民に無料で配布したとされています。

この「虎頭殺鬼雄黄圓」は疫病除けの薬として虎の頭の骨を配合した丸薬であり、医学的にはプラシーボ(思い込みの効果)以上の効果は無いとされていますが、その薬はとても効果が高かったとされており、今なお道修町で疫病除けの御守りとして売られている「張子の虎」は、この逸話に由来しているんだそうです。

くすりの道修町資料館

人文研究見聞録:少彦名神社 [大阪府]
入口の虎

少彦名神社の境内には「くすりの道修町資料館」という薬種関係の資料館が併設されています。

この資料館では、江戸時代から現在に至るまでの薬種業者による関係資料が三万点以上展示されているそうです。

物品で言えば、置き薬や薬種業者の使っていた道具などがあるとされています。

なお、入館は無料であり、5名以上の団体訪問の場合は、1週間前までに予約すると館長による案内を受けられるそうです。

料金: 参拝無料(資料館も入場無料)
住所: 大阪府大阪市中央区道修町2-1-8(資料館は少彦名神社内ビル3・4階)(マップ
営業: 6:00~18:30(資料館は10:00~16:00)、無休(資料館は日曜・祝日・盆・正月休館)
交通: 北浜駅(徒歩3分)、淀屋橋駅(徒歩8分)

公式サイト: http://www.sinnosan.jp/index.html
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。