彌彦神社 [新潟県]
2016/07/10
新潟県西蒲原郡弥彦村にある彌彦神社(いやひこじんじゃ)です。
一般的には「やひこじんじゃ」「おやひこさま」の名で知られており、越後の開拓神である天香山命を祀っています。
古くから朝廷や民衆に篤く尊崇されている神社とされ、現在では新潟県屈指のパワースポットとして人気を集めています。
また、周辺は温泉街となっており、様々な温泉やグルメスポットが点在する観光地としても有名です。
神社概要
由緒
由緒書によれば、彌彦神社の祭神・天香山命(アメノカゴヤマ)は天照大御神の曾孫に当たり、天孫降臨の折に御伴して紀州熊野(和歌山県)に住み、神武天皇の東征の際にはフツノミタマという霊剣を奉って功を立てたとされ、後に天皇より越國開拓の命を受けて、越國に漁業・製塩・農耕・酒造等の産業文化の礎を築いたとされています。
彌彦神社は、天香山命を越後開拓の神と仰いで当地に奉祀したことに始まるとされます。当社の背後に聳える弥彦山の頂上には天香山命の御神廟(墓所)があり、彌彦神社の神体山として祀られています。
なお、創建年代は不明なものの、『万葉集』より奈良時代以前の創祀であることが明らかであり、社記に「和銅4年(711年)の詔によって神域を広げ、社殿を造営した」とあることから、この時 既に神社が創建されていたことが示されています。
また、国史における初出は『続日本後紀』の「天長10年(833年)の条」で「霊験あらたかであるため、淳和天皇の名神祭に預かった」とあり、平安期の『延喜式神名帳』では名神大社に列せられ、後に越後一宮と称されたそうです。
こうした経緯から、当社は古来より朝廷の崇敬が篤く、中世に至っても皇室をはじめ源頼朝や上杉謙信など武士の崇敬を集めていたとされ、当地方の民衆の崇敬も顕著であったとされます。
よって、古くから「おやひこさま」の名で親しまれている神社であり、各地に多くの講(組織)が結成されて盛んに お弥彦参りが行われてきたとされています。なお、かつては お弥彦さま参りを済ませていない者は一人前と認められない地方もあったそうです。
祭神
彌彦神社の祭神は以下の通りです。
主祭神
・天香山命(アメノカゴヤマ):社伝では天照大御神の曾孫に当たり、神武天皇を助けたとされる
→ 「天香語山命」とも表記され、地名より「伊夜日古大神」「伊夜比古大神」「伊夜彦大神」などとも称される
⇒ 当地では「おやひこさま」「いやひこさま」「彌彦大神(やひこおおかみ)」とも呼ばれる
→ 『記紀』における高倉下(タカクラジ)に当たると思われる
⇒ 社伝と同様に、東征中の神武天皇を助けたと言う神話がある
→ 『旧事紀』における天香語山命(手栗彦命・高倉下命)は饒速日尊の子とされる
⇒ 社伝と同様に、東征中の神武天皇を助けたと言う神話がある
→ 『勘注系図』における天香語山命(手栗彦命)は、彦火明彦命の子とされる
⇒ 高倉下は天香語山の子とされる
→ 『ホツマツタヱ』ではタクリ(手栗彦命)の子のタカクラシタ(高倉下)とされる
⇒ 社伝と同様に、東征中の神武天皇を助けたと言う神話がある
⇒ 神武東征後に筑紫、山陰を巡り、越後の弥彦山に巣くうツチグモを鎮圧し、四国も治めたとされる
⇒ 神武朝に初穂を納めなかった越国を太刀を抜かずに治めた功から、ヤヒコカミという尊名を賜る
→ 祭神を大屋彦命、大彦命とする説がある
⇒ 尾張国造家の祖神である天香山命が越後に祀られるのは不自然なため
・天香山命(アメノカゴヤマ):社伝では天照大御神の曾孫に当たり、神武天皇を助けたとされる
→ 「天香語山命」とも表記され、地名より「伊夜日古大神」「伊夜比古大神」「伊夜彦大神」などとも称される
⇒ 当地では「おやひこさま」「いやひこさま」「彌彦大神(やひこおおかみ)」とも呼ばれる
→ 『記紀』における高倉下(タカクラジ)に当たると思われる
⇒ 社伝と同様に、東征中の神武天皇を助けたと言う神話がある
→ 『旧事紀』における天香語山命(手栗彦命・高倉下命)は饒速日尊の子とされる
⇒ 社伝と同様に、東征中の神武天皇を助けたと言う神話がある
→ 『勘注系図』における天香語山命(手栗彦命)は、彦火明彦命の子とされる
⇒ 高倉下は天香語山の子とされる
→ 『ホツマツタヱ』ではタクリ(手栗彦命)の子のタカクラシタ(高倉下)とされる
⇒ 社伝と同様に、東征中の神武天皇を助けたと言う神話がある
⇒ 神武東征後に筑紫、山陰を巡り、越後の弥彦山に巣くうツチグモを鎮圧し、四国も治めたとされる
⇒ 神武朝に初穂を納めなかった越国を太刀を抜かずに治めた功から、ヤヒコカミという尊名を賜る
→ 祭神を大屋彦命、大彦命とする説がある
⇒ 尾張国造家の祖神である天香山命が越後に祀られるのは不自然なため
詳しくはこちらの記事を参照:【彌彦神社にまつわる神話・伝説】
舞楽
大々神楽(弓の舞) |
彌彦神社の舞楽は「神歌楽・天犬の舞」「大々神楽」「小神楽」の3種からなり、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
このうち「神歌楽(かがらく)」は神武天皇の即位大典の際に彌彦大神自らが奉奏したと伝えられており、天犬の舞(あまいぬのまい)と共に一社伝来の秘舞として燈籠神事(7月25日)の時のみに奏されるそうです。
また、「大々神楽」は妻戸大神例祭 (4月18日)の際に奏され、他にも全13曲の舞を奉奏するとされています。
鎮魂祭
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鎮魂祭(ちんこんさい、みたましずめのまつり)とは、宮中(皇居)で新嘗祭の前日に天皇の鎮魂を行う儀式を指します。宮中の他にも この祭を行う神社があり、奈良県の石上神宮、島根県の物部神社、新潟県の彌彦神社、この3社が有名です。
通常では11月22日に行われる祭とされますが、彌彦神社では4月1日と11月1日の年2回行われそうです。ただし、公式サイトに鎮魂祭の案内は無いため、一般参加はできないものと思われます。
関連社
彌彦神社の関連社は以下の通りです。
摂社
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【境内】
・武呉神社(たけくれじんじゃ):天香山命の第1嗣・天五田根命(アメノイツタネ)を祀る
・草薙神社(くさなぎじんじゃ):天香山命の第3嗣・天戸国命(アメノトクニ)を祀る
・今山神社(いまやまじんじゃ):天香山命の第4嗣・建筒草命(タケツツクサ)を祀る
・勝神社(すぐるじんじゃ):天香山命の第5嗣・建田背命(タケタセ)を祀る
・乙子神社(おとごじんじゃ):天香山命の第6嗣・建諸隅命(タケモロズミ)を祀る
【境外】
・櫻井神社(さくらいじんじゃ):天香山命(アメノカゴヤマ)を祀る(弥彦村麓字小桜)
・妻戸神社(つまどじんじゃ):熟穂屋姫命(ウマシホヤヒメ)を祀る(長岡市寺泊野積)
・船山神社(ふなやまじんじゃ):天香山命の第2嗣・天忍人命(アメノオシヒト)を祀る(新潟市西蒲区福井)
・武呉神社(たけくれじんじゃ):天香山命の第1嗣・天五田根命(アメノイツタネ)を祀る
・草薙神社(くさなぎじんじゃ):天香山命の第3嗣・天戸国命(アメノトクニ)を祀る
・今山神社(いまやまじんじゃ):天香山命の第4嗣・建筒草命(タケツツクサ)を祀る
・勝神社(すぐるじんじゃ):天香山命の第5嗣・建田背命(タケタセ)を祀る
・乙子神社(おとごじんじゃ):天香山命の第6嗣・建諸隅命(タケモロズミ)を祀る
【境外】
・櫻井神社(さくらいじんじゃ):天香山命(アメノカゴヤマ)を祀る(弥彦村麓字小桜)
・妻戸神社(つまどじんじゃ):熟穂屋姫命(ウマシホヤヒメ)を祀る(長岡市寺泊野積)
・船山神社(ふなやまじんじゃ):天香山命の第2嗣・天忍人命(アメノオシヒト)を祀る(新潟市西蒲区福井)
末社
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【境内】
・二十二所社(にじゅうにしょしゃ):畿内の著名な22箇所の大神を祀る
・八所神社(はっしょじんじゃ):京都以東の著名な8箇所の大神を祀る
・十柱神社 (とはしらじんじゃ):オオナムチを始め、大地・水・山・海・土などの国土安全の10柱の大神を祀る
【境外】
・湯神社(ゆじんじゃ):オオナムチ、スクナヒコナを祀る(西蒲原郡弥彦村)
・祓戸神社(はらえどじんじゃ):弥彦への本街道入口に鎮座し、穢れを除くとされている
・火宮神社(ひのみやじんじゃ):迦具都知大神(カグツチ)を祀る
・住吉神社(すみよしじんじゃ):住吉三神(すみよしさんしん)を祀る
・上諏訪神社(かみすわじんじゃ):建御名方命(タケミナカタ)を祀る
・下諏訪神社(しもすわじんじゃ):建御名方命(タケミナカタ)を祀る
・二十二所社(にじゅうにしょしゃ):畿内の著名な22箇所の大神を祀る
・八所神社(はっしょじんじゃ):京都以東の著名な8箇所の大神を祀る
・十柱神社 (とはしらじんじゃ):オオナムチを始め、大地・水・山・海・土などの国土安全の10柱の大神を祀る
【境外】
・湯神社(ゆじんじゃ):オオナムチ、スクナヒコナを祀る(西蒲原郡弥彦村)
・祓戸神社(はらえどじんじゃ):弥彦への本街道入口に鎮座し、穢れを除くとされている
・火宮神社(ひのみやじんじゃ):迦具都知大神(カグツチ)を祀る
・住吉神社(すみよしじんじゃ):住吉三神(すみよしさんしん)を祀る
・上諏訪神社(かみすわじんじゃ):建御名方命(タケミナカタ)を祀る
・下諏訪神社(しもすわじんじゃ):建御名方命(タケミナカタ)を祀る
境内の見どころ
一の鳥居
彌彦神社の一の鳥居です。
高さ約8.4mの朱塗りの両部鳥居であり、鳥居と大地の間に6cm程度の隙間があることが特徴です。
なお、この隙間は雪や雨で腐らないようにする目的があるとされています。
玉の橋
彌彦神社の玉の橋です。
「御神橋(ごしんきょう)」とも呼ばれる半月型の橋であり、神が渡るための神聖な橋とされています。
なお、この橋は明治期に弥彦で大火が起こった際、火災の影響を受けずに焼けることが無かったそうです。
火の玉石
彌彦神社の火の玉石(ひのたまいし)です。
重さで願望成就を占うことができる石であり、地元では「重軽の石」と呼ばれているそうです。
神木
彌彦神社の神木です。
かつて、彌彦大神は「此処が住むに相応しい所なら、根を生じ、芽を出し、繁茂するであろう」と言って杖を挿したとされます。
この神木は、その杖が大きく成長したものであると伝えられているそうです。
狛犬
彌彦神社の狛犬です。
首から珠飾りを掛けていることが特徴的であり、国の有形文化財に指定されています。
随神門
彌彦神社の随神門(ずいしんもん)です。
両側に随神を配している門であり、この先に拝殿があります。
随神
彌彦神社の随神(ずいしん)です。
郷土資料の『桜井古水鏡』によれば、熊野から天香山命に随行した「印南鹿神の子の兄弟神」を祀っているとされます。
拝殿
彌彦神社の拝殿です。
当社の参拝方法は他と異なり、参拝時の柏手は「2礼4拍手1礼」で行う慣わしとなっています。
なお、他に この方法を用いる神社は「出雲大社」「宇佐神宮」などが有名です。
宝物殿
彌彦神社の宝物殿です。
有料ですが、弥彦神社に伝わる宝物の数々を観ることができます。
弥彦山登山道
彌彦神社の境内にある弥彦山登山道です。
境内の万葉道の先にあり、さらに先に進むとロープウェイ乗り場があります。
なお、ロープウェイの運行は夕方の明るい内までなので、訪れた際には早めに登ることをお奨めします。
周辺の見どころ
大鳥居
彌彦神社の大鳥居です。
矢作駅付近に位置しており、高さは30mもあるそうです。
弥彦山
弥彦山(やひこやま)です。
彌彦神社の背後に聳えており、彌彦神社の神体山として祀られています。
なお、弥彦山は境内の万葉道の先にある登山口もしくはロープウェイで登ることができます。
御神廟
天香山命の御神廟(ごしんびょう)です。
弥彦山の山頂に位置しており、彌彦神社の祭神・天香山命と妃神・熟穂屋姫命(ウマシホヤヒメ)が祀られています。
祭神が夫婦揃って祀られている場所であるため、縁結びの名所としても知られているそうです。
彌彦神社上陸地碑
彌彦神社上陸地の碑です。
彌彦大神が上陸した場所であると伝えられており、弥彦山の西、寺泊町の野積海岸に位置しています(マップ)。
料金: 無料
住所: 新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦2898(マップ)
営業: 終日開放(宝物館9:00~16:00)
交通: 弥彦駅(徒歩14分)
公式サイト: http://www.oyahikosama100nen.com/index.html
住所: 新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦2898(マップ)
営業: 終日開放(宝物館9:00~16:00)
交通: 弥彦駅(徒歩14分)
公式サイト: http://www.oyahikosama100nen.com/index.html
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「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。
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